お客の「肘」を見ただけで、なぜ塚田農場の売上は伸びたのか:水曜インタビュー劇場(じーっと見る公演)(3/6 ページ)
店内にカメラを設置して、その映像をじーっと見る。スタッフなどの動きを分析して、生産性向上を支援している会社がある。「トリノ・ガーデン」だ。具体的にどんなことをしているのか。同社の社長に話を聞いたところ……。
塚田農場を分析
中谷: 居酒屋の「塚田農場」(運営:エー・ピーホールディングス)さんをご存じでしょうか?
土肥: 2〜3回は行ったことがあります。地鶏メニューを中心に展開していますが、ここ数年は苦戦が続いていますよね。運営会社エー・ピーホールディングスの既存店売上高をみると、53カ月連続でマイナスが続いていたことも。ただ、昨年の12月と今年の1月はプラス。「さあ、これからだ〜」というときに新型コロナの影響を受けて、再びマイナスに転じました。
中谷: 塚田農場さんの何がいけないのか。ストロングポイントとウイークポイントを浮き彫りにするために、店内にカメラを設置してさまざまな動きを見ることにしました。テーブルの稼働率、提供待ち時間、スタッフの対応速度、接客内容、作業地点など、1つ1つ集計しました。で、どんなことが分かってきたのか。
お客さんがキョロキョロして、その動きにスタッフが気付くスピードがものすごく速いんですよね。ちょっと話はそれますが、テーブルの上にあるコールボタンを押して、スタッフが到着するまでどのくらいかかるのか。某居酒屋チェーンを調べたところ、平均1分40秒でした。では、塚田農場さんは何秒だったのか。平均4秒だったんですよね。
土肥: 4秒! 確かに、スタッフが店内をよく歩いているイメージがありますね。
中谷: ちなみに、カウンター席しかないラーメン店で4秒ほど。店内に80〜100席ほどある居酒屋で、4秒という数字を出すことは「異常」とも言えるんですよね。しかし、その一方で課題が見えてきました。テーブルで3〜4人のお客さんが飲んでいる場合、どういったストレスがあるのか。大量の映像を見ていると、「飲みたいタイミングで飲めていないのではないか」ということが分かってきました。
例えば、会社の上司が話をしているときに、自分のジョッキに飲みものが入っていない場合、どうするか。話を止めて、または話を聞きながら、スタッフを呼んで注文することって難しいですよね。機嫌よく話をしている上司の機嫌が悪くなるかもしれないので。実際、生ビールであれば、10分ほど空の状態が続いている。ハイボールであれば、残った氷を10分ほどガリガリかんでいる。
こうした光景が見られるということは、どういった意味があるのか。お客さんは飲みたいタイミングで飲めていない、注文したいタイミングで注文できていない、ということですよね。そこに「ストレスが発生している」という仮説を立てました。
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