家系ラーメンの「町田商店」が超えた「多店舗展開10億円の壁」 カギはシステムパワー経営にあり:飲食店を科学する(4/5 ページ)
家系ラーメンの町田商店が急成長している。直営店が117店舗、プロデュース店が396店舗。「多店舗展開10億円の壁」をどう突破したのか。
マンパワー依存経営からシステムパワー経営への移行
飲食店の多店舗展開を成功させるためには、QSCレベル(Q=商品:クオリティー、S=接客:サービス、C=清潔・衛生:クリンネス)の維持・向上がとても重要になります。
1〜2店舗の時は、社長が直接店舗を指導してQSC向上に取り組めますが、3店舗を超えたあたりからだんだんとお店に目が行き届かなくなり、QSCレベルが低下するケースが良くあります。QSCレベルの低下と比例して、お客さま満足度が低下し一気に不振店化していきます。
仮に、一般的な飲食店の1店舗年商を6000万円とすると、3店舗の年商は約1.8億円となります。私はこのように今まで繁盛していたお店が3店舗を越えたあたりから、QSCレベル低下で不振店化していく現象を「多店舗展開2億円の壁」と呼んでいます(もちろんQSCだけが不振の原因ではありませんが)。飲食店が「多店舗展開2億円の壁」を乗り越えるためには、優秀な店長の力を借りて各店舗のQSCレベルを常に維持・向上する必要があります。
そして次に登場するのが「多店舗展開5億円の壁」です。同じく1店舗年商6000万円とすると約8店舗分です。8店舗ともなってくると、全店に優秀な店長を配属することが難しくなってきます。そのため、社長の右腕となる幹部スタッフが、各店舗のQSC向上などのサポートを行う組織体制を構築することが重要になります。
そして、最後の壁は「多店舗展開10億円の壁」となります。店舗数でいうと約16店舗です。16店舗、年商10億円ともなってくると、マンパワーだけでQSC向上を実現するのは難しくなります。QSCや店舗マネジメントを包括的に管理していく仕組み、つまり「システムパワーによるQSC向上」が必須となってきます。飲食店に限らず、多店舗経営を目指す多くの経営者が「脱マンパワー経営」に悩んでいます。実際に当社へのコンサルティング相談においても、マンパワー経営からシステムパワー経営への移行は、最も多いご相談内容となっています。
システムパワーによるQSC向上を実現する中で重要な要素の一つが、スタッフの評価制度です。なぜならスタッフのモチベーション無くして、店舗のQSC向上は絶対に実現しないからです。
次は町田商店グループの評価制度を見ていきます。
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