「生ビール190円」の原価率は85%? お客が3杯飲んでもしっかり利益が出る仕組みとは:飲食店を科学する(1/4 ページ)
「生ビール1杯190円」という看板を見かける。安さでお客を引き寄せる戦略だが、実は隠されたメリットもある。どんな狙いがあるのか。
飲食店を科学する:
【飲食店コンサルタントが解説】立地、メニュー数、原価率、回転率、利益率―飲食店の経営には、数字やロジックを積み上げて戦略を練る作業が欠かせない。人気になっているチェーン店や、すっかり定着しているが業態の裏側にあるノウハウを分析していく。
皆さまこんにちは。飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント代表の三ツ井創太郎です。本連載では、皆さまが日頃なんとなく利用したり、見たりしている飲食店のビジネスモデルやマーケティング戦略を、分かりやすく解説していきます。よろしくお願い致します。
繁華街を歩いていて「生ビール190円」「生ビール290円」といった看板を目にする機会があるかと思います。皆さんはこんな激安ビールの看板を見て「なぜそんなに安く生ビールを売れるのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか? 今回はそんな疑問に答えていきたいと思っています。
居酒屋の生ビールの原価は?
皆さんが普段居酒屋で飲んでいる生ビール。その原価をご存じでしょうか? 生ビール樽の仕入価格に関しては、店舗での使用量、店舗数、仕入れるメーカーなどによって取引条件がかなり異なりますが、おおよそ平均すると20リットルサイズで9000〜1万円程度です。
次に、生ビール中ジョッキの容量を考えましょう。あまり気にしていない方も多いかもしれませんが、実は生ビール中ジョッキの容量に関する決まりはありません。
実際に居酒屋で使用されている生ビール中ジョッキの容量を調べていくと、360〜500ミリリットルまで大きな開きがあります。今回は、ビールを低価格で提供するお店で良く使われている360ミリリットルジョッキをベースに考えていきます。
360ミリリットルジョッキに注げるビールの量はどの程度でしょうか。泡の部分を加味すると、実際に中ジョッキ1杯に使用するビールの量は約340ミリリットルとなります。
20リットルの樽をベースに考えると、1樽で約58杯とれる計算となります(20リットル÷340ミリリットル)。実際には洗浄時のロスなどがあるので、もう少し減りますが今回はロスを考慮しないで話を進めます。
仮に20リットル樽の仕入価格が9500円だとすると、生ビール中ジョッキの1杯原価は163円となります(9500円÷58杯)。
つまり、生ビールを1杯190円で販売しても理論上は赤字にはなりません。ただ、原価163円の生ビールを190円で販売するため、利益は27円しかありません。原価率に換算すると85%を超えてしまいます。一般的な居酒屋の原価率は30%〜33%となりますので、当然ながらこれでは利益を残せません。
では、なぜ生ビールの利益がほとんど無いのに店舗の利益を獲得できるのか? 次はそのロジックを説明します。
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