「生ビール190円」の原価率は85%? お客が3杯飲んでもしっかり利益が出る仕組みとは:飲食店を科学する(2/4 ページ)
「生ビール1杯190円」という看板を見かける。安さでお客を引き寄せる戦略だが、実は隠されたメリットもある。どんな狙いがあるのか。
「お客様1人獲得単価」というロジックで考える
飲食店が新規のお客様を獲得するためには大きなコストがかかります。皆さんはお店を探す際に「食べログ」「ぐるなび」「ホットペッパー」といったグルメサイトを利用することも多いと思います。こうしたグルメサイトは、一般客は無料で利用できます。しかし、お店側は必ずしも無料で掲載してもらっている訳ではありません。無料の掲載枠もありますが、繁華街などでは多くの飲食店が広告費を支払っています。広告費は店舗によってまちまちですが、一般的には月額固定で2万5000円程度です。競合店が多い繁華街エリアだと5万〜10万円もかけている店舗も少なくありません。
さらに、最近はグルメサイトを使ったネット予約の利用も増えています。このネット予約に関しても、店舗側は先ほどの月額固定掲載費とは別に、予約1人当たり200円程度の送客手数料をグルメサイトに支払っています(金額はグルメサイトの種類によって変わります)。
では、こうしたグルメサイトを利用して集客を行っているお店の月間コストを実際に計算してみます。
(A): グルメサイトから来店したお客様(ネット予約以外)
月額固定グルメサイト掲載費が5万円で、150人のお客様が来店された場合、お客様1人当たりの獲得単価は5万円÷150人で330円程度です。
(B): グルメサイトのネット予約から獲得したお客様
グルメサイト経由の送客手数料200円で、100人のお客様が来店された場合にかかる月額送客手数料合計は2万円となります。
AとBを合計すると、グルメサイト広告宣伝費合計7万円÷グルメサイト経由来店客数250人=1人獲得単価280円となります。
ここでポイントになるのが、生ビールを190円や290円といった激安価格で販売する居酒屋の多くは、グルメサイトなどに広告宣伝費をかけていないケースが多いということです。
つまり、グルメサイトなどに広告費をかけず、お店の入口の看板などで「生ビール190円!」などと大々的に打ち出すことによって、来店を獲得していこうという戦略です。
先ほどの例ですと、グルメサイトでは1人のお客様を獲得するために280円かかっていました。しかし、生ビール1杯190円でお客様が獲得できれば、理論上は広告費は0円です。
ただここで問題になるのが、生ビールの原価率です。1杯の原価が163円の生ビールを190円で提供した場合の原価率は85%となります。一般的な居酒屋業態での原価率は30%〜33%以内に抑えないとお店としての利益は出せません。
この問題を解決するために必須となるのが「原価ミックス」という戦略です。
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