トヨタ、燃料電池大型トラックの新型を初公開 「MIRAI」の新システム搭載、商用ニーズに幅広く対応:航続距離480キロ以上
トヨタ自動車は、燃料電池(FC)大型商用トラックの新型プロトタイプを米国で初公開した。新型「MIRAI」に搭載している第2世代のFCシステムを採用し、性能を向上。FCトラックなどの実用化に向けて取り組みを加速させる。
トヨタ自動車は12月11日、燃料電池(FC)大型商用トラックの新型プロトタイプを米国で初公開したと発表した。9日に日本で発売した新型「MIRAI」に搭載している第2世代のFCシステムを採用し、性能を向上させた。水素エネルギーの普及に向けて、FCトラックの実用化への取り組みを加速させる。
新型MIRAIのFCシステムは、トラックなど他のモビリティーへの転用を前提に開発。性能を高め、航続距離も大きく伸びた。そのシステムを採用した新型トラックも、従来モデルより加速性能や柔軟性を大幅に向上。荷重量は8万ポンド(約36トン)、航続距離は300マイル(約480キロ)以上となり、幅広い商用トラックニーズに対応できるようにしている。
同社は2017年から、米ロサンゼルス港湾地域で商用トラックへのFC技術展開の可能性を検証する取り組みを実施。第1世代のFCシステムを搭載した大型商用トラックを19年4月に公開した。このトラックは、20年12月から貨物運送会社への納入を開始している。
今回初公開した新型についても、貨物輸送での実用化に向けて実証を進めていくという。
トヨタは日本でも、FCトラックの実用化に向けて取り組みを加速させている。22年春ごろには、アサヒグループホールディングスやヤマト運輸などと共同で、FC大型トラックの走行実証を始める計画。日野自動車と共同開発するFC大型トラックを各社の物流業務で使用し、環境性能や商用車としての実用性を検証する。また、コンビニ大手3社(セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン)とは、FC小型トラックの導入に向けた走行実証を21年に実施する。
トラック以外でも、すでにFCバス「SORA」を販売し、東京などで実用化されている。鉄道分野では、JR東日本、日立製作所と連携して、燃料電池と蓄電池を電源とするハイブリッドシステムを搭載した試験車両「HYBARI」を開発すると発表している。
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