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「6年前のM&A」でアリババに罰金、企業分割もちらつかせる中国当局の真意:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(2/4 ページ)
アリババなど中国大手IT企業3社が12月14日、独占禁止法違反で50万元(約800元)の罰金を課せられた。いずれも過去のM&Aを当局へ申請しなかった点が問題視されている。世界ではGAFAへの規制が強まっているが、中国をデジタル大国に押し上げた立役者であるメガIT企業に対しても、同様に当局の姿勢が締め付けへと変化している。
罰金800万円のメッセージ性
中国市場監督管理総局は12月14日、アリババ、テンセント傘下でコンテンツ配信サービスを手掛ける「閲文集団」、物流大手順豊エクスプレス傘下でスマート宅配ロッカーを展開する「豊巣網絡技術」に対し、独占禁止法第48条、49条に基づき行政処分を行ったと発表した。
当局によると、アリババは2014年から17年にかけて大手小売企業「銀泰商業集団」の株式計7割超を取得した際に当局へ買収の申請を怠ったという。他の2社の処分もおおむね同じ内容だ。
50万元という罰金は3社の企業体力を考えると微々たる額だが、48条が規定する罰金の上限額でもある。そして、M&Aそのものは問題視されていない。08年に施行された独禁法は一定額以上のM&Aについて当局への申請を義務付けているが、これまでは厳格に運用されていなかったようだ。
つまり、当局は過去の違法行為を洗い出し、後出しでアリババに行政処分を発令した。「IT企業も独禁法の網から逃れられない」という強いメッセージを与えることが目的だと考えられる。
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