電動化の主役は完成車メーカーではなくサプライヤーだ!:加速するクルマの電動化(6/6 ページ)
菅政権による自動車の電動化規制に注目が集まっている。カーボンニュートラルによる電動化規制は世界中に広がっており、自動車業界を大きく揺るがすことになるだろう。そして、これまでの動きから見えてくるのが主役交代だ。今後は、完成車メーカーからサプライヤーへ、主役がシフトすると考えられる。
バッテリーの性能、それも極限性能が決め手
しかしEVやプラグインハイブリッドなど、バッテリー搭載量の多い車種を広域で販売するためには、単なる航続距離や車両価格などのコストパフォーマンスだけでは行き詰まるだろう。やはり決め手はバッテリーになるのではないか、と筆者は見ている。
電動化においては、モーターやインバーターも要となる部品だが、その技術力レベルは世界中で高まっており、今後もさらに接近した争いになるだろう。レアアースの使用率を下げる技術で日本はトップレベルにあるが、レアアースを産出する地域においては、その技術にアドバンテージはあまりない。
リチウムイオンバッテリーは、エネルギー密度が高いため品質の問題で発火事故が起こることも知られるほど、シビアな品質管理が要求される。しかもモーターとは異なり、バッテリーは各温度帯の対応が容易ではない。通常のリチウムイオンバッテリーは低温時に電圧降下が避けられないため、バッテリーを暖める必要すら出てくる可能性もある。
低温に強いリチウムイオンバッテリー、リチウムイオンキャパシタなど、日本の蓄電技術がこれまで培ってきた技術がさらに発展すれば、EVやPHEVの信頼性、耐久性を向上させることになり、結果的にブランド力を高めることにもつながっていく。現状の技術レベルで満足せず、さらに高みを目指す地道な努力を続けられる点が、日本のエンジニアリングの強みといえるのではないか。
アイデアや決断力では、欧米や大陸には敵わない部分もあるかもしれない。けれども、これまで培ってきた日本のものづくりの地盤は、これからも引き続き強みになる、絶対に。そう信じてサプライヤーにエールを贈ろうではないか。
関連記事
- 果たして自動運転レベル3は、ドライバーにとって優しいのか?
人間不要の自動運転はレベル4、レベル5と呼ばれる。しかし、現状は機械とドライバーのハイブリッドであるレベル2とレベル3が射程に入ってきたところだ。しかし、このレベル3はさまざまな問題を抱えている。そのため、実用化についてもメーカーによって方針は大きく異る。 - 「技術の日産」の魂は、死んでいない アライアンスの行方は?
日産自動車経営陣の新体制が固まった。3頭体制への期待は高いが、その周囲の役員の間にはさまざまな思惑がうごめいているという情報もある。日本とフランスの国策企業というプライドが、足を引っ張りあっていくなら、良いクルマやサービスも生まれない。 - 新燃費規程 WLTCがドライバビリティを左右する
ここ最近よく聞かれるのが、「最近の新型車ってどうしてアイドルストップ機構が付いてないの?」という質問だ。全部が全部装備しなくなったわけではないが、一時のように当たり前に装備している状況でなくなったのは確かだ。それに対してはこう答えている。「燃費の基準になる測定方法が変わったから」。 - 自動車メーカーを震撼させる環境規制の激変
「最近のクルマは燃費ばかり気にしてつまらなくなった」と嘆いても仕方ない。自動車メーカーが燃費を気にするのは、売れる売れないという目先のカネ勘定ではなくて、燃費基準に達しないと罰金で制裁されるからだ。昨今の環境規制状況と、それが転換点にあることを解説する。各メーカーはそのための戦略を練ってきたが、ここにきて4つの番狂わせがあった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.