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ナイキ、DHCも標的に! 「不買運動」はホントのところ、どれほど効果があるのかスピン経済の歩き方(3/5 ページ)

ナイキが「差別」をテーマにした動画を公開して、不買運動が起きた。DHCが「差別的表現」をして、不買が呼びかけられている。こうした行動は、どこまで効果があるのか。売り上げなどを見ると……。

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不買運動は、正直「弱い」

 このように個人を徹底的に吊(つる)し上げることでストレス発散をしている人たちからすれば、「あの差別企業の製品を買わないでボイコットしましょう!」という企業への攻撃は正直、「弱い」と言わざるを得ない。ぶっちゃけ、個人への誹謗中傷という刺激に慣れきった人たちにとって、あまりカタルシスが感じられないのだ。

 実際、それがうかがえるのが、人種差別に抗議をした大坂なおみさんへの攻撃と、日清食品への不買運動だ。覚えている方も多いと思うが、今年の9月、大坂なおみさんが米国で警官に黒人が殺害された事件を受けて、人種差別への抗議の姿勢を鮮明にしたところ、一部の方たちが大阪さんを執拗(しつよう)に攻撃し始めた。

 スポーツに政治を持ち込むな。日本人なら黙って試合に集中するのが、相手選手への礼儀だ。かの国では黒人は犯罪率が高いので警官の行動は正しい。抗議にかこつけて略奪など破壊行為をしている連中をあおるな……など厳しい批判がSNSに溢れかえり、中には口汚く罵(ののし)る人たちもいた。

 この現象は一部日本人の反応ということで遠く海外でも報じられた。そのような意味ではSNSの発信力、そして世界への影響力はすさまじいものがある。しかし、これが「SNSでの不買運動呼びかけ」というとややビミョーだ。

 実はこのとき、大坂さんをボコボコに叩く人たちの間で、彼女のスポンサーをしている日清の不買が呼びかけられた。が、結果から先に言ってしまうと、まったく盛り上がらなかったのである。

 先ほどのような理由で、大坂さん個人を攻撃することはみんな嬉々としてやっていたにもかかわらず、いざその怒りを、日清という企業へ向けようとしたが、思いのほかそのような動きをつくることができなかったのである。

 もちろん、世の中は広いので、いまだに「大坂なおみのスポンサーをやめるまではカップヌードルは買わない」と頑張っておられる方もいるかもしれない。が、残念ながら、その頑張りは、日清側の経営判断に影響を及ぼすほどにはなっていないのだ。


日清食品への不買運動も起きたが……

 日清食品の上半期(4〜9月)の即席麺販売実績は、売上収益970億3300万円(前年比4.9%増)、セグメント利益165億4700万円(同41.0%増)と順調に推移している。また、日本食糧新聞(2020年12月21日)に掲載されている「20年1〜11月即席麺POSランキング(全国975店舗)」によれば、1位から4位まではカップヌードルや焼きそばUFOが独占している。

 つまり、SNSであれほど大坂なおみさんを叩いていた人たちも、「日清不買」はスルーして、いつも通りに日清のカップラーメンを買っている可能性が高いのだ。そのあたりは今回、「差別」で痛烈に批判をされているナイキやDHCも同じだ。リアル店舗やECサイトの活況ぶりを見る限り、大規模な不買運動が発生しているようには感じられない。

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