なぜ、企業研修・セミナーは「つまらない」のか 大学のオンライン授業で得た気付き:コロナ禍でオンライン化も進むが……(1/4 ページ)
「つまらない」と感じる人が意外と多いのが、企業研修やセミナーだ。コロナ禍を受けてオンラインで受ける機会が増えたが、面白いと思えるものは多くない。なぜ、つまらないのか。法政大学で講師を務め、オンライン授業も実施している筆者が解説する。
コロナ禍での接触制限により、これまでの「同じ時間に同じオフィスへ出社する」という働き方のスタイルが大きく変わりつつあります。緊急事態宣言中に在宅勤務を経験し、以降もオンライン併用型で業務を進める企業も増えてきました。働き方環境の変化の中で、マネジメントや育成のスタイルも変わりつつあります。
変わりつつある働く環境の中で、「マネジメントが非常にやりにくい」「部下の育成がうまくいっているか心配だ」という上司や、「周囲とのコミュニケーションがとりづらい」という部下の声が出てきています。中には「嫌いな上司と顔を合わせずストレスが減った」と喜ぶ部下の声もあるようですが、お互い顔が見えない慣れない環境の中で、戸惑っている方も多いのではないでしょうか。
企業ではWeb会議やオンライン面談も多くなり、対面での仕事ができず、OJT(On the Job Training)での育成機会が減少したことを受けて、オンライン研修などの育成プログラムを開始する企業も出てきています。HR総研の調査によると、2020年度の新入社員研修をオンラインで実施した企業は前年比2割増になっているようです。
オンラインのメリットは、どこからでも気軽に参加できること。これまでは会場でしか受講できなかったものが、どこからでも参加できるようになりました。移動時間もいらなくなり、場所の制約が取り払われたことで、誰にでも学ぶチャンスは増えています。
ただ、今のところ、リアルで実施したセミナーや研修内容をそのままにオンラインに置き換えて実施しているだけにとどまっているものもあり、オンライン向けにアップデートできていないものもあるのではないでしょうか。
研修は、つまらないもの?
ところで、これまで企業が行っていた研修に参加して、つまらないと感じたことのある方もいるのではないでしょうか。筆者自身も、人事になる前は研修を受けるのが嫌いでした。具体的には、次のように感じている方もいるのではないでしょうか。
自分の仕事を優先したい
ただでさえ自分の仕事が忙しいのに、その時間を研修に取られるという人は多いはずです。業務時間中にわざわざ時間を割いて参加することにストレスを感じることもあるでしょう。
目的がはっきりせずモヤモヤする
研修の目的や内容を事前に詳しく伝えている企業は少ないのではないでしょうか。これから起こることが分からないのは不安やストレスを与えることになります。
自分のためになるのかが分からない
参加する研修が、自分のためにならないと感じることもありますよね。参加者の置かれる立場はそれぞれ違い、課題も異なるのに、一律でインプットされることに対しての抵抗感を感じた経験がある人は多いのではないでしょうか。
多くの人事は、受講者がこのような抵抗感を持って研修に参加していることに悩みを抱えているはずです。では、なぜ受講者はそう感じてしまうのでしょうか。一般的に企業で行われる研修がどのようなものか、見てみましょう。
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