テクノロジーは全てを解決しない 人事担当者が知っておくべき「HR Tech」の実像:HR Techの現在地(1/5 ページ)
膨大な数のサービスが登場した「HR Tech」だが、企業の人事課題を何でも解決する“魔法の杖”として過信するのは禁物だ。熟慮せずに導入したことにより、何も解決せず、またかえって担当者の負担が増大してしまうケースも少なくない。本記事では、複数のあ企業で人事責任者を“複業”し、人事領域に詳しい高橋実氏が、人事担当者として知っておくべき「HR Techの実像」を解説する。
人事業界を賑わしている「HR Tech」。
HR Techナビとウィルグループの「HR業界カオスマップ」によると、2019年10月時点で449ものサービスがあり、飽和状態と言ってもいいほど乱立しています。そのサービスは、採用から労務管理、組織のエンゲージメントやピープルアナリティクス(組織分析)、さらには退職した人との関係構築(アルムナイリレーションシップ)まで、さまざまなものが存在しています。
筆者は現在、複数の会社で人事を担当する“複業”をしていますが、おかげさまで多くの人事担当者の方から、「経営者から、社員のモチベーションを上げたいのでサービスを導入しろと言われた」とか、あるいは経営者の方から、「競合企業があのサービスを入れたと聞いたので、ウチも入れてみたい」などというご相談が後をたちません。
HR Techは、魔法の杖ではない
まず筆者は、「HR Techを新しく導入したい」というご相談に対して、「HR Techは、魔法の杖ではありません」と、お伝えしています。
「何となく新しそう」「何となく何か我が社の組織課題を実現してくれるんじゃないか」――。そんな淡い期待だけで導入を進めると、間違いなく失敗します。安易にHR Techを導入しようとして、活用しきれずにやめてしまうケースや、現場を知らない上層部が導入するソリューションを勝手に決めて現場での運用が大混乱してしまうケース、何が解決したのか分からずそのままルーティンワークになり、かえって非効率になってしまうケースなど、山ほど見てきました。
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