ワークマンやカインズを育てた群馬発「ベイシアグループ」の正体:長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/6 ページ)
高成長を続けて注目されるワークマンやカインズ。これらの企業は「ベイシアグループ」に属する。1958年、群馬県に誕生した「いせや」はなぜここまで成長したのか。
牛乳やペットボトル茶にこだわるベイシア
ベイシアも1都14県に141店を出店している。PBを開発して20年ほどになるが、ワークマンやカインズほど目立っているわけではない。しかし、要所に競争力の高い商品を配置し、顧客のリピートにつなげている。
例えば「別海のおいしい牛乳」がある。これは、北海道別海町において、摩周湖の伏流水やこだわりの牧草で育てられた、ホルスタイン種とジャージー種を掛け合わせた特別な乳牛だけが出せる、濃厚で深いコクと上品な味わいを有している。
飲むヨーグルト、バウムクーヘン、あんドーナツ、キャンディーなどの関連商品があり、これらもベイシアでしか手に入らない差別化された商品となっている。
「静岡茶」は600ミリリットルのペットボトルで51円(税込)。値段も安いが、お茶の本場の1つである静岡県掛川産の茶葉を使用。すっきりと香り高い味に仕上げている。
また、近畿大学水産研究所が開発したブリとヒラマサの交雑種「ブリヒラ」を19年7月より販売している。夏場はブリの身がやわらかくなり赤身の色も変色しやすい。しかし、ヒラマサの身のかたさや赤身の少なさが加わることで、夏でもブリのおいしさを兼ね備えた魚が提供できる。
魚介類の品ぞろえには定評があり、弁当もかれいや銀鮭の味醂焼きなどの人気商品がある。
NBや生鮮も、競合店に負けない品数と安さにはこだわっており、通路を広くとってベビーカーでもストレスがない売場づくりを心掛けている。
新しい試みとして、ベイシアとカインズが一緒に、新しいショッピングセンター「くみまちモール」の開発に取り組んでいる。18年6月に群馬県前橋市、同年11月に埼玉県新座市にオープンした。「くみまち」とは「組み・街」を意味する造語で、目的を共有する企業、顧客、地域行政が一体となったコンセプト共有型のショッピングセンターを目指す。
新座店では、外部のスターバックスコーヒーや眼鏡のJINS、動物病院なども入居している。
また、20年11月に埼玉県朝霞市にオープンした最新のくみまちモールでは、カインズと外部のイトーヨーカ堂がコラボしており、さまざまなアライアンスの組み方を実験している。
このように、いったん専門店として独自に発展した業態が、くみまちモールとして再集結する方向性を見せている。
くみまちモールの場合、ワークマンやベイシア電器のようなグループ会社が入ることもあれば、競合他社や飲食・ファッションなどの外部企業が参集することもある。地域のニーズによってさまざまなアライアンスが組める、自由なモジュール型のモールとなっていくようだ。
ベイシアグループは売上1兆円を超えても、進化が止まらない。
※初出から一部表記を修正しました
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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