2015年7月27日以前の記事
検索
ニュース

『鬼滅の刃』歴代興行収入1位、それでも止まらぬ映画業界「未曽有の危機」ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(5/5 ページ)

『鬼滅の刃』が日本での映画興行収入歴代1位に。ただ、映画業界の危機的状況は続くと筆者は分析。コロナ禍が露見させた業界の課題とは。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-
前のページへ |       

洋画減少は日本・アジア勢拡大のチャンス

 洋画の供給減少は映画業界の危機であると書いたが、これは見方を変えればチャンスでもある。日本を含むアジアコンテンツの拡大と成長が、これから起きるかもしれないからだ。この商機を逃さず作品を作り展開すれば、市場は一気に広がる。

 ところがここでも一歩先を行っているのは配信会社だ。Netflixは、アジアの各地域で作品を製作するローカルプロダクションに力を入れている。特に「日本アニメ」「韓流ドラマ」「インド映画」は重点ジャンルである。米国で契約数が世帯数の上限に近づいているNetflixにとって、サービス提供していない中国を除いても東アジア、東南アジア、西南アジアは人口が多く、今後の成長を目指すべきホットな市場だ。ここで勝負するには、アジア発のコンテンツが求められる。

 日本のNetflixのデイリーランキングでは、上位のほとんどが日本アニメと韓流ドラマで占められている。実写ドラマの『全裸監督』はアジア各国でトップランキングを獲得した。アジアの視聴者はアジアの番組を求めている。

 さらにアジアの番組はアジアだけでなく、他国でも観られる意外な事実もある。Netflixの発表によれば2019年に北米では韓流ドラマは前年の3倍、アニメは2倍見られたという。人気拡大に加えて、番組数が増えていることも理由だろう。人気の高さがラインアップを増やし、ラインアップの増加が視聴を広げる。

 劇場映画、そして配信と流通手段が広がることで、日本のコンテンツのニーズは、さらに世界中で増す可能性がある。この流れに日本の映画業界が乗らない理由は無い。アジア作品をアジア地域に提供するのであれば、米国の会社のインフラを通す必要も無い。

 コロナ禍は、映画業界がこれまで抱えてきた大きな課題も露(あら)わにしたとも言える。日本映画界にとっては今年訪れたこの危機と向き合うことで、逆に長期的な生き残り策を講じられる契機にできるかが問われている。

著者プロフィール

数土直志(すど ただし)

ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。アニメーションを中心に映像ビジネスに関する報道・研究を手掛ける。証券会社を経て2004 年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立。09年にはアニメビジネス情報の「アニメ! アニメ! ビズ」を立ち上げ編集長を務める。16年に「アニメ! アニメ!」を離れて独立。主な著書に『誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命』 (星海社新書)。


前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る