“冬の時代”から始まった平成アニメ、いかに2兆円産業に飛躍したか:ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(1/5 ページ)
アニメ・映像ジャーナリストの数土氏が平成アニメビジネス史を総括する。冬の時代から今の繁栄にどう至ったのか。
2019年4月で30年以上続いた「平成」の世が終わる。アニメ業界でも平成を節目とした企画・特集をよく見かけるようになった。
しかし、アニメ史にとって「平成30年間」の区切りはあまり便利でない。30年は想像以上に長く、日本アニメ101年余りの歴史の1/3近くにもなるからだ。日本アニメが本格的に羽ばたいた『鉄腕アトム』のテレビ放送開始から計算すれば、56年のうち半分以上だ。
この期間のアニメ業界の動きはすさまじい。『美少女戦士セーラームーン』から『新世紀エヴァンゲリオン』『ポケットモンスター』に『けいおん!』『涼宮ハルヒの憂鬱』『Fate』『君の名は。』まで、日本のアニメ史で制作された作品の半分以上が平成に詰まっている。とにかく大量で、次々に変わっていったのが平成アニメの歴史だ。
大ヒット作、意外に少ない平成初期
カルチャーシーンだけでなく、アニメビジネスでも大きな変化があった30年間である。歴史をひもとくと、実はその幕開けが「アニメ 冬の時代」とも言われた時期だったのをご存じだろうか。
まず、昭和天皇が崩御し平成の世が始まった1989年の日本のアニメ業界を振り返りたい。同年にTV放送をスタートした主なタイトルは『ドラゴンボールZ』『らんま1/2』『悪魔くん』など。全体を見渡すとキッズ向けが目立つ。ティーンより上の世代を明確に狙っているのは『機動警察パトレイバー』だけである。
劇場映画ではスタジオジブリの『魔女の宅急便』と『ドラえもん のび太の日本誕生』が大ヒット作だ。いずれも配給収入は20億円以上。現在の興行収入に換算すると40億円近い大ヒットになる。他には『ヴイナス戦記』『機動警察パトレイバー the Movie』『超神伝説うろつき童子』『ファイブスター物語』と今でも傑作と呼ばれる作品もあるが、大きなヒットには至っていない。
実は、平成初めのアニメシーンはそれほど活発でなかった。特にヤングアダルトを中心にしたアニメファン文化は勢いに欠けていた。1986年に『マイアニメ』(秋田書店)、87年に『ジ・アニメ』(近代映画社)に『アニメック』(ラポート)と、アニメファン向けの雑誌が昭和の終わりに相次いで休刊していたことからもそれは分かるだろう。
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