FGO運営会社がFGOと関係ないボードゲームを作る深い訳 塩川氏に直撃:遊び? 実は隠れた戦略が(1/3 ページ)
スマホゲーのFGO運営会社がボードゲームを制作。趣味ではなく新人社員への教育が狙い。ゲーム作りを最初から最後まで実践させて経験値を高める。
スマートフォンゲーム「Fate/Grand Order(FGO)」を運営するディライトワークス(東京・渋谷)がボードゲーム事業を推進している。社内にゲーム専用カフェを設けたほか、11月にはボードゲーム2作を発表した。ちなみにFGOと関係ない同社初のオリジナルタイトルだ。スマホゲーメーカーがボードゲームを手掛けるのは珍しい。
スマホゲー業界屈指の売り上げを誇るFGO。11月に発表されたディライトワークスの決算公告によると、2018年7月期の最終利益は前期比約6割増の約73億円。ゲームの販売元の企業を傘下に持つソニーが決算発表で増益要因に挙げたほどの好調が続く。
一見“趣味”、でも狙いは「人材育成」!?
確かにボードゲームは専門のカフェや大会が盛り上がるブームだが、市場規模が1兆円を超えたスマホゲーとは比較にならない。ディライトワークスのボードゲーム事業も、高収益を背景にした“趣味”と見れなくもない。
しかし同社クリエイティブオフィサーにしてFGOの「顔」こと塩川洋介さんによると、これはれっきとした人材育成の一環なのだという。デジタルゲームの最前線にいる彼らが大マジメにアナログゲームを作る理由について、塩川さんと、実際に制作した若手社員に聞いた。
塩川さんによると、社内にはもともとボードゲーム好きの社員が多く、終業後に会議室でよく集まって遊んでいた。ここ数年のブームもあり、有名ボードゲームカフェと組んで今春には社内にゲーム専用の部屋を開設した。社外の人を呼んでイベントを開くなど、社内交流やレクリエーション、対外的なイメージアップに一役買っていた。
ボードゲームは最近始めたばかりという塩川さんだが「これは新人教育にも使える」と考えた。同社は4月に初めて新卒を採用。ゲーム制作の実践を兼ねた研修として、5人の新人にボードゲーム作りの“オーダー”を下した。
同社の手掛けるスマホゲーとアナログなボードゲームは一見、関係が薄いように思える。ボードゲームの特長である他プレーヤーとの交流要素はFGOにはさほどない。しかし塩川さんによると、ボードゲームを作る中で「ゲーム制作を頭から終わりまで経験できる点」が大きいのだという。
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