FGO運営会社がFGOと関係ないボードゲームを作る深い訳 塩川氏に直撃:遊び? 実は隠れた戦略が(2/3 ページ)
スマホゲーのFGO運営会社がボードゲームを制作。趣味ではなく新人社員への教育が狙い。ゲーム作りを最初から最後まで実践させて経験値を高める。
仲間割れの危機乗り越え
近年のスマホゲー開発には膨大なコストと人員、長い時間がかかる。特にFGOは既存のタイトルであり、新人は企画やデザインといった業務の一部分を途中から担う。「即戦力になることも大事だが、(新人に)ゲームの全体像は見えづらい」(塩川さん)。
これまでも大学の客員教授に就任したり「弟子入りプロジェクト」を打ち出したりするなど、若手ゲームクリエイター育成の在り方を模索してきた塩川さん。「ゲーム作りは一気通貫してやると経験値が上がるもの。しかし、(今のスマホゲーでは)何年もやってもリリースに関われるのはせいぜい2回くらい。しかも(参加スタッフの)何百人のうちの1人になってしまう」。
また、ゲーム制作という大プロジェクトの中で新人社員の仕事がどうしても1作業に特化しがちなことも懸念していた。「初めの3年間、モンスターのテクスチャだけ書き続けてきた人は次のゲームでの仕事も同じ内容になりがちだ。専門性に特化した技術は必要だが、『あなたの仕事は単なるテクスチャを作る作業じゃない。ゲームを作ることなんだ』と(若手に)意識してほしかった」(塩川さん)。
そこで目を付けたのが、はるかに少ない人員とコスト、比較的短期間で作れるボードゲームだった。アイデアの立案から製品化、販売まで一通り新人たちに経験させることで、スマホゲー制作におけるテクスチャ描写のような個別作業が、プロジェクト全体の中でどういう役割を果たすか学べる機会になると考えた。
5人の新入社員のリーダーに当たるディレクターを任されたのが青山奨さん。普段はゲームデザイナー職に就いている。通常業務ではばらばらの部署にいる新人が勤務時間を割いて集まり、数カ月かけて制作した。「ラブレター」で世界的に著名なボードゲームデザイナー、カナイセイジさんなどが監修した。
終業後に社内のカフェで深夜までボードゲームに興じるほどはまった5人だが、アイデアのすり合わせには難航した。「自分では面白いと思っているアイデアを他のメンバーに説明しても『何が面白いの?』と理解してもらえないことも。ギクシャクして仲間割れしそうなこともあった」(青山さん)。
それでもカナイさんたちの力を借りてコンセプトやルールを詰め、「モック」と呼ばれる模型を使って自分たちのアイデアを実際のボードゲームの形に落とし込み、完成させていった。「ゲーム作りを通じて、学生から社会人になる中で(そのままでは)通用しないことが多いと感じた。“ホウ・レン・ソウ”やタスク管理といった当たり前のことに加え、仲間割れしないためには友達感覚でなく、社会人としてチームの一人一人を尊重しなくてはいけない、といったことも学んだ」(青山さん)。
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