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“冬の時代”から始まった平成アニメ、いかに2兆円産業に飛躍したかジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(2/5 ページ)

アニメ・映像ジャーナリストの数土氏が平成アニメビジネス史を総括する。冬の時代から今の繁栄にどう至ったのか。

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『ガンダム』産み出した1970〜80年年代の反動

 平成初期に同人誌イベント「コミックマーケット」で人気だった作品と言えば、男性向けでは『美少女戦士セーラームーン』、女性向けでは『鎧伝サムライトルーパー』『聖闘士星矢』だった。本来は女児・男児向けの作品だ。当時はコアなファンをターゲットにした作品が少なく、ファンは一般向けタイトルの中に潜んだコアな要素に面白さを見つけていた。

 それは『機動戦士ガンダム』や『超時空要塞マクロス』に『うる星やつら』といった傑作が次々にムーブメントを生みだした1970年代から80年代の反動でもあった。平成の始まりの時期が、アニメビジネスにとって「冬の時代」と言われる理由だ。

平成でアニメビジネスは2.5倍に

 平成の始まりではアニメビジネスのボリュームも小さかった。メディア開発綜研の調査による市場規模を見てみよう。ちなみに現在よく数字が引用される「アニメ産業レポート」が登場するのは2009年から。発行元の一般社団法人・日本動画協会の設立も02年だ。

 メディア開発綜研によれば1990年(平成2年)の国内アニメ市場は劇場映画、TV、ビデオソフト合算で1069億円、同じ調査で2017年は2694億円だ。28年間で市場は約2.5倍になった。この間の日本の実質GDP成長率は、1.3倍に過ぎない。

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アニメ市場規模の推移(メディア開発綜研調べ)

 メディア開発総研の調査では1989年(平成元年)の数字はなく、85年(昭和60年)を261億円としている。実は昭和から平成に移る前後の市場成長はすさまじい。平成アニメビジネスの幕開けは、「冬の時代」であると同時に激動の最中でもあった。

 平成初期の市場成長を支えたのは、当時はビデオカセット・レーザーディスクといった映像ソフトで発売された、OVAと呼ばれる作品群である。89年だけでも『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』『御先祖様万々歳!』『超人ロック ロードレオン』など粒ぞろいだ。

 単価が高いOVAは、アニメファンの消費を促す大きな市場に育ちつつあった。それでも数千人から数万人に向けられて作られた作品は、インターネットもSNSも発達していない時代では広がりが限定されていた。「アニメ 冬の時代」の原因は作品の内容でなく、作品とユーザーがうまくつながっていないアニメファンシーンの停滞にあった。

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