東京商工リサーチは、2020年1〜12月の「旅行業の倒産動向」調査を発表した。倒産数は26件(前年比4.0%増)で過去20年間で2番目の低水準。新型コロナウイルス感染拡大が原因の倒産は7件で、旅行業全体の約3割(構成比26.9%)だった。
2020年の新型コロナウイルス感染拡大は、海外との入出国規制や緊急事態宣言による外出自粛で観光業界に大打撃を与えた。一方で政府・自治体・金融機関による資金繰り支援策や持続化給付金や雇用調整助成金などの支援策が広がり倒産を抑制した。
7月に開始した「GoToトラベル」キャンペーンも旅行業界には追い風となった。しかし、実施期間が短く、対象が国内旅行に限られたこともあり、大手旅行会社も軒並み赤字決算を発表、早期・希望退職の実施を打ち出した企業も現れた。
倒産の原因は「販売不振」21件、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」2件などの不況型倒産が23件(構成比88.4%)を占めている。オンライン販売を専門とする旅行業者(OTA)に押されていた業者が、コロナ禍による旅行需要の消滅で事業継続を断念した例もある。
形態別では「破産」が25件で倒産全体の9割以上を占めた。小規模事業者が事業継続を断念し、破産を申請するケースが多い。民事再生法は1件のみで、2015年以来5年ぶりに発生した。
都道府県別では東京の6件が最多。大阪4件、愛知3件、福岡2件、青森、茨城、埼玉、千葉、富山、滋賀、京都、兵庫、鳥取、広島、鹿児島が各1件と続く。前年に倒産が発生し2020年に発生しなかったのは福島、岐阜、静岡、徳島の4県。北海道は5年連続で発生していない。
他社倒産の余波で6月に民事再生法を申請したホワイト・ベアーファミリー(大阪)の負債額は278億円。旅行業としては平成以降最大で、これが全体の負債総額を押し上げた。
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