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ジャック・マー氏“失踪”直前のスピーチ全文(後編)浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(5/5 ページ)

アリババのジャック・マー(馬雲)前会長が、2カ月余り公の場に姿を現さず、消息についてさまざまな憶測が流れている。氏が2020年10月24日のスピーチで、中国の金融当局を批判したため、習近平国家主席らの怒りを買ったとの説もある。今回は、筆者訳のスピーチ全文の後編を紹介する。

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 最後になりますが、今、人類社会は最も重要な時を迎えています。今回の感染症を決して甘く見てはいけません。これは第二次世界大戦に匹敵するような、人類社会の歩みをひっくり返す力があります。

 金融の視点から見れば、米国が世界各国、特にウォール街の株式市場に大量の現金を送り込み、各国がそれに倣う、その後の結末がどうなるか考えているでしょうか。その影響の大きさは、多くの人が今討論している技術の問題とは比べ物になりません。

 私たちは世界中の多くの組織・機関の存在意義を簡単に否定せず、共にその価値を考え直すべきです。国連、WTO、WHO、これらの組織には確かに多くの問題がありますが、組織を解体して問題が解決するわけではありません。とはいえ、これらの組織が未来思考でどう改革を進めるか、改めて考えなければなりません。

 新たな金融システムの未来の方向は、望もうが望むまいが、必ず考える時が来ます。私たちがやらなくても、誰かがやるでしょう。改革は犠牲を伴うもの、対価を払うものですが、我々の世代がこのように改革を行えば、次の世代の人々は、我々が先輩として責任を果たしたと見てくれると信じています。これは歴史的な機会であり、歴史的な責任です。

 過去16年、アント・グループは一貫してエコ、サスティナブル、金融包摂と向き合ってきました。これらのポリシーに沿った金融を否定するなら、再び過ちは繰り返され、取り返しがつかない事態になるでしょう。ご静聴ありがとうございました。

筆者:浦上 早苗

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37

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