総務・人事・経理こそ、ワーケーションをすべき理由 350社の業務を改善したプロが力説:【前編】日本のバックオフィスを変える!(1/2 ページ)
総務・人事・経理などのいわゆるバックオフィス(管理部門)と呼ばれる部署は他の職種に比べ、出社して作業をしている割合が高い。そのような中、「バックオフィスこそ、ワーケーションをすべき」と力説するバックオフィスの専門家たちがいる。350以上の企業や自治体、官公庁などでの組織変革支援や業務改革支援の経験を持つ、作家でありワークスタイル専門家の沢渡あまねさんと、業務改善コンサルティングやBPOサービスを提供するWe will accounting associatesの代表取締役で税理士の杉浦直樹さんだ。「バックオフィスこそ、ワーケーションをすべき」理由を、対談形式で伺った。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークが急速に普及した。その一方で、総務・人事・経理などのいわゆるバックオフィス(管理部門)と呼ばれる部署は他の職種に比べ、出社して作業をしている割合が高い。
そのような中、「バックオフィスこそ、ワーケーションをすべき」と力説するバックオフィスの専門家たちがいる。
350以上の企業や自治体、官公庁などでの組織変革支援や業務改革支援の経験を持つ、作家でありワークスタイル専門家の沢渡あまねさんと、業務改善コンサルティングやBPOサービスを提供するWe will accounting associatesの代表取締役で税理士の杉浦直樹さんだ。
一般に、テレワークさえ難しいとされるバックオフィスに、ワーケーションを勧める理由とは何なのか。バックオフィスが“オープンな経験”をすることで企業が得られるメリットや、成長できる企業であるためにどのようなバックオフィスを作り上げていくべきかについて沢渡さんと杉浦さんの対談から探る。
バックオフィスが「オープンな経験」をすべき理由
沢渡あまねさん:作家/ワークスタイル専門家。あまねキャリア工房代表(フリーランス)、なないろのはな取締役(浜松ワークスタイルLab所長)、NOKIOO顧問ほか。350以上の企業/自治体/官公庁などで、働き方改革、マネジメント改革、業務プロセス改善の支援・講演・執筆・メディア出演を行う。著書『職場の科学』『ここはウォーターフォール市、アジャイル町』『IT人材が輝く職場 ダメになる職場』『職場の問題地図』『マネージャーの問題地図』ほか。趣味はダムめぐり
沢渡あまねさん(以下、沢渡): 私はワーケーションという言葉が生まれる前から、ダムが好きなのでダム際に車を停めて、車内や東屋など自由な場所で働いてきました。それを支えたのがWeb会議やチャット、ファイル共有システムをはじめとするデジタルツールです。テレワークやワーケーションをするには、まず「デジタルワーク」をする必要があると感じています。
杉浦直樹さん(以下、杉浦): バックオフィスが変革すべき理由は、企業組織の変化と関係していると言っていましたよね。
沢渡: はい。昔は製造業が主な産業で、“統制型”で組織が成り立っていました。しかし、最近では製造業大手も、先を見据えてITや通信業とコラボレーションしています。つまり他社との“コラボレーション型”、“オープン型”にしていかないと生き残れない世の中になってきているんです。
他社と協力し合うオープン型企業になるには「デジタルワーク化」が欠かせません。しかし、契約書類のやりとりの手法や打ち合わせ方法、経費処理の仕方などはバックオフィスが決めている。そこがオープンな経験をしていなければ、従来のやり方の不便さに気付けない。アナログな方法を内部規定で強要して、企業のオープン化の足かせになってしまうかもしれないのです。そのためワーケーションなどの手段を通して、バックオフィスに携わる方には「オープンな経験」をしてほしいと考えています。
杉浦直樹さん:We will accounting associates 代表取締役、税理士。日本オラクル株式会社、米国ベンチャー企業を経て2016年に税理士法人We will、17年にWe will accounting associates株式会社を設立。主にfintechを用いた新しい会計ソリューションの導入を得意としている。The Garage for startups主催、浜松テレワークパーク実現委員会代表、経済産業省 始動Next innovator 第4期選出
杉浦: バックオフィスがオープンな体験をするメリットには、「知見をためられる」という側面もありますよね。
基本的に自社内の取り組みなので、実験し放題です。そうして得られた知見から、自社の営業部隊を支援することもできるでしょう。その営業部隊の“営業先”が顧客企業のバックオフィスであるならなおさらです。
会社の在り方が変わっていく社会にあって、自社の変化、他社への提案のためにも、バックオフィスが保守的にならず、オープンな経験を積むことが大切だと思います。
沢渡: バックオフィスに多い“紙の業務”の存在が、それを阻害していますよね。緊急事態宣言下にあっても、ハンコを押すために出社する、ということが社会問題として話題になったのは記憶に新しいです。見積書や請求書、印刷物──これらがデジタル化できていないと、場所にとらわれない働き方が実現できません。
どうして「テレワーク」だけではなく「ワーケーション」なのか?
杉浦: そこで「バックオフィスこそワーケーションを」というわけですよね。
沢渡: そう。ひとっ飛びに(笑)
バックオフィス業務に携わる人たちに、テレワークだけではなくワーケーションまで経験してもらいたい理由が2つあるんです。
関連記事
- 総務・人事・経理のテレワークの秘訣とは? 「セキュリティが不安」「部下の様子が分からない」の悩みを業務改善のプロが一刀両断!
「バックオフィスこそ、ワーケーションをすべき」──350以上の企業や自治体、官公庁などでの組織・業務改革支援の経験を持つ作家でワークスタイル専門家の沢渡あまねさんと、業務改善コンサルティングやBPOサービスを提供するWe will accounting associatesの代表取締役で税理士の杉浦直樹さんはそう語る。「セキュリティやコンプライアンスの理由でクラウドサービスが使えない」「テレワークで部下が目の前にいないと、仕事をしているのか把握できない」といったバックオフィスの改革を阻む考えの矛盾を指摘しながら、変化する時代の中で「生き残るバックオフィス」であるために必要な業務の取り組み方について、対談する。 - 社員2000人「7割がリモートワーク」実現 KADOKAWAが“出社前提・紙文化”から脱却できた理由──きっかけは「マンガ」作戦
2020年11月、ところざわサクラタウン内に新オフィス、所沢キャンパスをオープンしたKADOKAWA。所沢キャンパスの稼働時をめどに、ABW(Activity Based Working)を掲げ、場所にとらわれず充実した働き方を目指す改革を約5年かけて進めてきた。出社して紙の原稿を回す文化の大規模出版社が、コロナ禍で社員2000人の7割リモートワークを実現するまで、どのような軌跡があったのか。 - フリーアドレス、業績連動評価、年俸制……良かれと思った施策が失敗した理由とは?
あらゆる人事施策には、メリットとデメリットがあります。他社にとっては良い施策でも、自社で導入してみると合わなかったということも起こり得ます。今回は、フリーアドレス、業績連動評価、年俸制の3点について、よくある誤解とその原因、対策を事例を交えてお伝えします。 - テレワークでも「話しやすい」組織の作り方 心理的安全性を守る毎日の習慣とは?
組織として高い目標を目指さなければならない場合、年次や役職に関係なく互いに意見を戦わせながら学び合い、成果を出し続けることが必要です。しかし「部下に発言を促してもなかなか意見や提案が出てこない」といったお悩みをお持ちの管理職や、「自由闊達な意見交換ができる社風の作り方が分からない」という人事担当者も多いのではないでしょうか。「話しやすい」組織にするための実践法をご紹介します。 - 「他と違った行動を認めない」「テレワークで細かく監視したがる」上司が、企業のイノベーションを阻害している
新型コロナウイルスの感染拡大に伴いテレワーク化が進められている。一方で、「相変わらず、対面の社内ミーティングが必須」といった企業も少なくない。こうした現状について、『職場の問題地図』などの著書で知られる業務改善・オフィスコミュニケーション改善士の沢渡あまね氏は、「日本型マネジメントの根底には、“幼稚性”がある」と指摘。インタビューで真意を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.