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コロナ・ショック後の回復が遅れるJ-REIT市場KAMIYAMA Reports(1/2 ページ)

行動制限やロックダウンなどの影響で、世界的に株式やREITの価格が急落した後、J-REIT市場は株式市場に比べて回復が遅れている。現時点で、REITは割安と考えている。足元、底打ち感が出てきたとはいえ、今後の経済正常化を十分に織り込んだ水準には回復していない。

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日興アセットマネジメント

 2020年3月ごろに新型コロナウイルス感染拡大を抑える目的で導入した行動制限やロックダウン(都市封鎖)などの影響で、世界的に株式やREITの価格が急落(以下、コロナ・ショック)した後、J-REIT市場(以下、REIT)は株式市場に比べて回復が遅れている。


東証REIT指数と日経平均株価の推移

 回復の遅れについて理由をいくつか挙げてみると、以下のようなものだろう。(1)最近の報道で、オフィスの空室率の上昇や家賃収入の減少が伝えられている、(2)テレワークの増加が予想され、オフィス需要が趨勢で低下する懸念がある、(3)REITが分配金を引き下げるケースも出ている、(4)主要投資家である銀行の市場への回帰が遅れている、などといった点である。

 3月のコロナ・ショック時に大幅下落した日経平均株価が、足元で30年ぶりの高値をつけた、などと伝えられるほど株式は急回復しているが、REITの回復は遅れているように見える。

 株式市場の回復は、製造業の急回復などに裏付けられている。飲食や対面の小売り、旅行や空運の低迷をカバーするほどにモノの売り上げが増えており、製造業や貨物運送、インターネット通販などを中心に利益や株価が回復してきた。

 しかし、REITについて述べたことと同じ理由で、不動産業の株価は相対的に振るわない。困難に直面する飲食業などとの家賃引き下げ交渉、テレワークによるオフィス面積の縮小などは、新型コロナウイルスのワクチン接種が進むことで解決に向かうと考えられる。しかし、現時点では回復の兆しよりも現状の厳しい情勢のほうが報道されやすい。

 ただし、20年末ごろまでに悪材料はおおむね織り込まれ、銀行による売却も一段落している模様で、これ以上、下落する理由は見当たらない。20年を通じて、金融機関の3月や9月の決算期末での売却に海外投資家が買い向かう構図がみられたが、銀行等も徐々に押し目買いに転じつつあるように見える。

 世界の新型コロナウイルス感染者数の増大が投資家の目を引いてしまうが、いわゆる第3波では、各国政府は行動制限について業種を絞り、補助金配布についても丁寧な対応が進んでいる。最近までコロナ禍の影響を大きく受けた業種では業務の縮小・廃業などが進んだものの、残存者については、家賃の支払い能力を維持できる期待もある。ウイルスの変異種がどの程度影響するかなど、不確実性は残っているものの、ワクチン接種をきっかけに経済の正常化が進む場合は、不動産業やREITにとって大幅な環境改善が期待される。

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