業績好調のアイリスオーヤマ マスクで見せた「一点突破全面展開」と「時流適応経営」の秘密:コロナ禍をチャンスに(6/6 ページ)
アイリスオーヤマの業績が好調。その強さの秘密は「時流適応型経営」にある。マスクの生産も話題になったが、ここにも重要な戦略が隠れているという。
危機に事業を変容させることができるか?
アイリスオーヤマは上場会社ではありません。オーナー会社です。株主との利害調整や社内のあつれき、社内稟議などに時間やコストをかける必要がありません。結果的には、環境の変化に迅速に対応することが可能です。しかも、次の時代を見据えて親から子へと世代交代も進めました。息子である大山社長が従来以上のスピードで新しい商品や新しいテクノロジーの開発を行い、会社の業容を変化させ、総合生活提案企業へと進化させています。カリスマ社長の後のトップ就任はうまくいかないことが多いものですが、同社は飛躍のタイミングにできています。大山社長が米国法人を担当した経験を生かして、今後は海外生産・海外販売の強化だけでなく、EC販売についてもかなり注力していくと思われます。
アイリスオーヤマの最大の強みは、危機の際に事業変容し、ピンチをチャンスに変えている点です。それはオイルショック時に倒産危機があり、リストラせざるを得なくなった経験があったからです。こういったことを踏まえ、同社では事業戦略や商品開発において「1.自社の強みを生かす」「2.将来性がある」「3. 収益性の高い業態」「4. 競合メーカーに比べて優位性がある」という方針を掲げました。これができなければ「永遠に存続できない」ことを身にしみて感じたからです。危機によって同社は方向性を明確に定めることができたのです。
だから、コロナ禍は同社にとっては最大の好機です。21年はさらなる業績の成長が見込まれます。22年にグループ売り上げ1兆円を目指す原点は、危機感にありました。危機こそ最大のチャンスという発想は今、さらに強まっていることでしょう。コロナで厳しい状況の中小企業の経営者やリーダーは、ぜひ同社の発想を学んでほしいと思います。
著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント
1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。
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