横浜市の「EVバス」実証実験が、路線バスの将来像に大きな影響を与えそうな理由:FCバスも(2/4 ページ)
横浜市がEVバスの実証実験を行っている。同プロジェクトは路線バスの将来像を築き上げる可能性を秘めていると筆者は考える。その理由とは?
日産自動車リーフの技術を活用
EVバスはすでに実用化されているが、高コストが難点で、普及には至っていない。産学官プロジェクトの中心人物、熊本大学大学院先端科学研究部の松田俊郎シニア准教授(以前、日産自動車に勤務していた)によると、日野自動車のポンチョのEVバスは1台8000万円だという。対し、一般的な路線バスタイプのディーゼルバスは1台3000万円で、EVバスの割高感が否めない。
そこで、熊本大学をはじめとする産学官プロジェクトが、バスやトラックなどの大型自動車向けの低コストEV車を開発し、自動車会社を横断した生産体制で普及させるべく、16年度から開発及び設計に入る。
低価格で実用的なEVバス開発のヒントになったのは、日産自動車のリーフだ。本格的なEV乗用車として発売されると、50万台売れたという。その技術を活用し、大型車用にアレンジすることで低価格化を実現。さらにディーゼルエンジンの既存車もEVバスに改造することができる。
こうして九州産交バスの車両1台をEVバス実証試験車「よかエコバス号」に改造し、2018年2月から1年間にわたり、熊本市近郊路線1万6582キロを走行した。結果は良好ながら、CO2削減がディーゼルバスに比べ、30%にとどまるなどの課題もあった。
今回、横浜市で実証試験することになったのは、大都市なので利用客が多い、渋滞や発進停止の回数が多い、急な坂道が多いことなどが決め手となった。上記はEVバスの弱点だという。実証試験の結果を基に、克服する道筋を立てるものと推察する。
車両も既存のディーゼルバス1台をEVバスに改造した。市営バスを運行する横浜市交通局によると、改造費用は1000万円超だという。
実証試験は2020年10月28日〜2021年2月中旬まで。市営バス26・34・36・59・87系統で運行される。
式典終了後に試乗(横浜市役所の周辺を1周)すると、運転士がアクセルやブレーキを軽く踏んだだけでも滑らかな加速と減速、ウインカーの音が際立つほど走行音も静か。走り心地や乗り心地もFCバスと変わりないほど快適だ。
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