デジタル時代の会社組織では、正社員の役割が「変貌する」かもしれない理由:デジタル時代の人材マネジメント(2/2 ページ)
デジタル化によるテクノロジーの進展は、会社組織のありようや社員の定義にも影響を及ぼす。どのような変化をもたらそうとしているのか。
デジタルに限らずテクノロジーの進展はとどまるところを知らず、新しいビジネスモデルや先端技術が出現するたびに、企業は事業ポートフォリオや人材ポートフォリオといった「企業アセット」の組み換えをしなければならない。
一方で外部との協働化が進むに従い、こうした企業アセットの組み換えは外部との「エコシステムの見直し」を意味することになる。それは企業アセットの組み換えと比べると、しがらみの点から比較的やりやすいといえるからである。
むしろ必要なことは「本当に会社内部でやることは何か」を見定めることだ。そして「自社の社員はどういうことをするヒトか」を再定義する必要がある。デジタル時代では直接雇用の社員だけではなく、社外のパートナー会社やフリーランサーとの業務委託契約といった分業も一層進展する。これまでは正社員がビジネスの中心で業務を差配する役割分担だったが、エコシステムにおける協働体制では、会社や事業のコア(核)の部分を必ず正社員が担当するとはいえなくなってくる。
さらに言及するならば、「会社組織」が何をもって外部と境界を設定するかという組織論の問題に発展する。エコシステムでつながっている会社同士や会社とヒトは、一対一ではなくネットワーク的な協働体である。それは会社という概念や組織が、コミュニティーのような緩やかなつながりの上に乗っている姿に近いのかもしれない。
では、コミュニティー上に存在する会社組織とは、何をもって会社外との境界線とするのか、その際に社員(特に正社員)は何を期待されるヒトなのか。本当の意味での「デジタル時代の会社組織」は今とは全く違う枠組みで語る必要があるのかもしれない。
著者紹介:内藤琢磨
(株)野村総合研究所 コーポレートイノベーションコンサルティング部 組織人事・チェンジマネジメントグループ グループマネージャー 上席コンサルタント。
2002年野村総合研究所入社。国内大手グローバル企業の組織・人事領域に関する数多くのコンサルティング活動に従事。専門領域は人事・人材戦略、人事制度設計、グループ再編人事、タレントマネジメント、コーポレートガバナンス。
主な著書・論文に『NRI流 変革実現力』(共著、中央経済社、2014年)、『「強くて小さい」グローバル本社のつくり方』(共著、野村総合研究所、2014年)、『デジタル時代の人材マネジメント』(東洋経済新報社、2020年)などがある。
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