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「DS3 クロスバック E-TENSE」 100年に渡る物語が導いたEV池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/6 ページ)

本稿は、米欧2地域にまたがる世界第6位の自動車メーカーが誕生するのに至った歴史的背景の興味深さをひも解くと同時に、この度日本への上陸を果たしたPSAのフラッグシップブランド「DS」のEV、DS3クロスバック「E-TENSE」の立ち位置を解説しようという目論見で書かれている。E-TENSEEにはリアルな未来の先取りを感じるのである。

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 いずれにしてもいろいろ見識を感じるクルマだ。例えばシャシーからもそれは分かる。EV最先端を争うメーカー、例えばフォルクスワーゲンは、内燃機関と共用するシャシーを止めて、EV専用シャシーへの転換を図っている。もちろんパッケージのより高い合理性を求めればそうなるのだろうが、その莫大な開発費を回収するためには、台数を売り抜くしかない。

 それが例えばポルシェのタイカンのような、ウルトラハイパフォーマンスのためのEVであれば、合理的パッケージは必然といえるのだが、人々の日々の足として使われるクルマにおいて、今の年間販売台数を想定して、そこまでのこだわりは必要ない。

 「シャシーが何だから買う」という人はいわゆるクルマオタクであって、少数派に過ぎない。そんなことよりむしろ価格や、デザインの方が商品として大事だ。客に見えない価値。それも差異の小さいところに兆円単位の投資を続けることが、合理的といえるほどにはまだEVは売れない。

 DS3クロスバック E-TENSEは、時代を見据えた現実解のひとつであると思う。534万円というBセグとしては記録級の支払いに驚愕(きょうがく)せず、デザインに価値を見出し、大枚をひょいと払える資力がある人にとっては。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。


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