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「DS3 クロスバック E-TENSE」 100年に渡る物語が導いたEV池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/6 ページ)

本稿は、米欧2地域にまたがる世界第6位の自動車メーカーが誕生するのに至った歴史的背景の興味深さをひも解くと同時に、この度日本への上陸を果たしたPSAのフラッグシップブランド「DS」のEV、DS3クロスバック「E-TENSE」の立ち位置を解説しようという目論見で書かれている。E-TENSEEにはリアルな未来の先取りを感じるのである。

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どう評価するか?

 もちろんエッジの立ったEVファンに言わせれば、バッテリー容量がどうだとか、充電速度がどうだとか言いたいことはいろいろあるのかもしれないが、おそらくDSにとってはそんな些末(さまつ)なことよりも、大事なことがあるのである。そこはEV派の人には想像し難いのかもしれないが「高回転で吹き上がるエンジンサウンドが……」とか、「キーをオンにした後の燃料ポンプの音を聞いてからセルを回す儀式が……」みたいなことがEV派から見れば心底どうでも良いと感じるのと同じである。ユーザーとして許容できる程度に便利か不便かという以上の数値になんて興味はないし、むしろDSは、もっと本能的なサムシングエルスを刺激することを大事にしている。

 さて、乗ってみるとどうか? そもそもベースモデルのDS3クロスバック自体がなかなかの佳作車である(記事参照)。その傾いた出で立ちからは想像できない落ち着いた品の良い走りを見せる。意外にもと書いたら失礼かもしれないが、派手なルックスと裏腹に、じんわりと良いクルマなのだ。

 もちろん、DS3クロスバック自体がコンセプチュアルな商品なので、E-TENSEだからといってその走りの文脈は全く変わらない。例えば加速。ガソリンモデルと比べると、かなり速いが、その速さが昨今のEVらしいワープ系かといえばそうではない。あくまでもピリ辛であって激辛には仕立てない見識がそこに見て取れる。大人なのだ。

 唯一差が出るのは車両重量約300キロの増加による乗り心地だ。仕立ては相当に上手いので、ほとんどの場面ではそれだけの重量差を感じさせることはない。驚くべきことにばねの硬さもほぼ感じない。ただ路面のうねりで跳ね上げられた時の路面トレースにはどうしても差が残る。ガソリンであれば接地感が消えない速度で後輪のフィールが喪失し、着地後のリバウンドも消しきれない。巧妙なのであまり言い立てたいほどの悪癖ではないが、黙っているわけにもいかない。

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