時短せず「ノーマスク」で接客する店も 「ナメんじゃねーよ!!」と怒る“反逆飲食店”の言い分:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)
緊急事態宣言を受け、時短や休業要請がされている。しかし、通常営業を続ける“反逆飲食店”も存在する。支援金などの制度を実情に沿った形に改善すべきだと筆者は主張する。
保健所の見解は?
保健所に確認したところ、新型コロナ患者の濃厚接触者はおおむね「マスクなしに、1メートル程度の距離で、15分以上の会話などをした場合」に認定される。つまり、従業員や顧客が感染していても、ノーマスクで2〜3分、接客したくらいでは感染しないと見なされている。
長時間の大声での会話が危ない。いくら手指を消毒しようが、体温を測ろうが、無症状者でも感染させるとされている。
ソーシャルディスタンスを考えず、飛沫拡散防止のパーテーションも置かないお店があったとする。さらに、換気が十分でない空間で、満席状態だ。お客さん同士が酒の勢いも手伝い、大声でしゃべり合い、店員も場を盛り上げようと元気な接客をしていればどうなるか。飛沫が飛び交って、必然的に集団感染を引き起こすリスクが高くなる。
現在、新型コロナは感染症法の分類で、結核などと同様の2類相当の指定感染症とされている。感染すれば、入院の勧告・措置がとられる。また、無症状者にも適用されるなど、2類より厳しい措置がとられている。入院の費用は、公費で負担する。入院を拒否したり入院先から逃げたりしたら、改正特措法により50万円以下の過料が科されることとなった。
マスクを着用せずに営業して、集団感染を起こしてしまうと、治療に公費が使われる。そのため、非難の対象になり、店舗の再建が困難になるだろう。
不公平感の是正が必要
そもそも、時短や休業の要請に対して、もう少し適切な協力金や支援金が支払われていれば、”反逆飲食店”など出現しない可能性が高い。
家賃が高くて人件費もかかる都心部の大型店と、郊外にあって夫婦で営んでいるような小さな店のどちらも、1日6万円の協力金。これは、どう考えても不公平だ。
19年10月の消費増税では、同じような商品(例えば牛丼)を販売しても、コンビニ、スーパー、弁当屋などで買えば8%据え置きなのに、飲食店で食べれば10%となった。つまり、「税の公平性の原則」に反する差別的な法制になっている。もともと不利な消費税制が施行されている上に、今回の緊急事態では飲食店を狙い撃ちにしたような時短要請を行った。しかも、昼に飲食店に行くのも自粛してほしい、さらには時短に従わないと罰金をとる、それでも従わないと何回もとるとまで政府から言われれば、「ふざけるな!」と激怒する飲食業従事者が出てくるのも当然だ。
国や自治体には“反逆者”から罰金をとる前に、納税額や店舗の売り上げ、粗利、従業員数の規模など、実情に沿った対応が必要だ。適切な休業や時短の協力金を用意するだけでなく、家賃の補償をするなど、早急な改善をしてこれ以上の倒産や失業を防がなければいけない。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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