スシロー、成長戦略のカギは「キャンペーン」と「特大エビフライ」!? コロナ後を見据えた布石とは:飲食店を科学する(2/4 ページ)
コロナ禍で、今後の成長戦略をどう描くか悩む経営者は多い。筆者はスシローにそのヒントがあると考える。「業態と商圏」「既存と新規」という軸で見ていくと……。
コロナ禍における成長戦略とは
今年に入ってから、当社には「長引くコロナ禍の中で、今後の成長戦略をどう描いていくべきか分からない」といったご相談が多数寄せられています。
そこで、私が提唱している「ウィズ&アフターコロナの成長マトリクス」という戦略策定ツールをご紹介します。これは、戦略的経営の父としても有名な米国の経営学者イゴール・アンゾフが考案した「アンゾフのマトリクス」を飲食店向けにアレンジしたものです。企業の成長戦略を整理する際に活用できます。
飲食店の成長戦略を「業態と商圏」「既存と新規」という2軸で整理します。そして、それぞれどのようなアプローチをしていくのかを「A:シェア拡大戦略(既存業態×既存商圏)」「B:新業態開発戦略(新規業態×既存商圏)」「C:新商圏出店戦略(既存業態×新規商圏)」「D:多角化戦略(新規業態×新規商圏)」というように4つの戦略に分けて整理します。
A:シェア拡大戦略(既存業態×既存商圏)
「既存の業態」を「既存の商圏」で成長させていく戦略です。具体的には、新規客やリピート客の獲得、客単価アップなどの戦略です。ここでコロナ禍におけるスシローのシェア拡大戦略を分析します。
スシローは以前から、戦略として「キャンペーン」に力を入れています。そして、コロナ禍においても強力なキャンペーンが大きな集客につながっています。現在行っている寿司関連のキャンペーンをWebサイトで確認すると、「超まぐろづくし(2月19日〜28日)」「匠の一皿シリーズで一番売れたメニューを一皿に(2月10日〜2月28日)」「おいしさ満開ひな祭り(2月25日〜3月3日)」「天然インド鮪7貫食べ比べ(2月1日〜)」といったように、4つものキャンペーンを展開しています(2月20日現在)。
こうしたキャンペーンを次々と展開し、販売促進を行っていくことで既存客のリピートのみならず、新規客の獲得にも成功しています。
販売促進と聞くと「割引」などをイメージする方も多いかもしれません。しかし、スシローではキャンペーン商品のこだわりや付加価値をしっかりと打ち出すブランディング戦略を行っています。そして、今まで展開していなかった480円という新価格帯においても顧客からの支持を得ています。20年に登場した「特大エビフライ」(税別480円)は、東海エリア限定で販売していました。しかし、非常に好評だったため、全国で期間限定販売を行い、想定の2倍以上の売り上げを記録しています。寿司カテゴリーの商品のみならず、特大エビフライやデザートなど、顧客層が求めるあらゆるニーズに対応するキャンペーンなどの取り組みが功を奏し、同社の客単価は20年12月から対前年比110%以上で推移しています。
次に「B戦略=新業態開発戦略(新規業態×既存商圏)」について見ていきます。
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