投資額は10年で17倍! 急拡大する「フェムテック」市場を働く男性こそ知るべき理由:職場の多様性担保にも必要(5/5 ページ)
最新の技術を使って、女性特有の健康問題を改善する「フェムテック」。その市場規模が急速に拡大している。多様性のある職場をつくるためにも、男性こそ知っておくべきと筆者が主張する理由とは?
フェムテック市場成長の鍵を握る「4つのA」
では、こうしたタブー商品が広がっていくためにはどんな壁を取り払う必要があるのでしょうか。
杉本さんは「4つのAが重要」と指摘しています。これはハーバード大学の公衆衛生分野の専門家らが作成したフレームワークです。
1:Acceptance(文化的な、価値観的な理解があるか)
2:Availability(手に届くところにあるか)
3:Affordability(手ごろな価格、経済的に買えるか)
4:Adoptability(使い方がよく分かるか)
杉本さんは東京大学修士号、London School of Hygiene & Tropical Medicine(英)公衆衛生博士を取得している医療経済分野のプロフェッショナルです。その後、国内外の医療・ヘルスケアスタートアップへの政策アドバイザーを務めたり、孫泰三氏のベンチャー・キャピタルで働いていたりした時に「Modern Fertility」というサンフランシスコ発のフェムテック製品と出会いました。同製品に興味を持ったのがフェムテックビジネスをスタートしたきっかけです。
フェムテックがこの4つのAをクリアするようにさまざまな構造を改革できれば、もっと多くの女性たちを身体や心の悩みから救うことができるのではないかと考えているのです。
世界のフェムテック市場には素晴らしい商品が多くありますが、タブー視されていた現実や文化的問題、そして薬機法などの法的障壁がこれまでありました。そのため、販売できなかったり、販売までにかなりの時間とコストがかかるというのがこれまでの通例でした。また、物づくりに携わる企業の意思決定権者に男性が多かったり、女性のエンジニアや女性医療関係者が積極的に商品開発に関わってこなかったこともフェムテックが広がってこなかった原因かもしれません。
例えば、生理用ナプキン。1961年に日本にナプキンが入ってきてから60年以上、大きな規制改革は行われず、「生理用品=使い捨てナプキン」という現実が続いています。世界にはたくさんの月経関連アイテムがあるにもかかわらず、日本では使い捨てナプキンが生理用品という認識です。
こうした先入観も、フェムテック市場がさまざまな規制の中でタブー商品として扱われてきた歴史によって作られたと言えるかもしれません。
しかし、最近では、吸水ショーツや月経カップなどが少しずつ身近になり、女性にとっての選択肢が増えてきています。
現在、杉本さんたちは政府関係者や国会議員とフェムテックに関連するさまざまな議論を進めているようです。従来の商品カテゴリーに入りづらいフェムテック商品が、医療分野の必要不可欠なものとして正確に認知され、薬機法上の位置付けが明確になることを目指しています。今後、日本でのフェムテック商品やサービス開発もさらに進んでいくことが期待されます。
最近、「#わきまえない女」「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」など、女性に関する話題が注目されています。
これらの問題は、男性が女性のことをあまりにも知らなさすぎることが本質的な問題なのではないかと私は感じています。
私自身はフェムテック市場に触れることにで、女性の身体のことを最低限のレベルで知ることが何より必要だと痛感しました。「SDGs」や「ダイバーシティー」など、知った風なことを会議で語る前に、まずは女性が普通に困っていること、悩んでいること、それを口に出さずに仕事にまい進していることを知るべきではないでしょうか。
著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント
1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。
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