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リモートだと「部下の仕事ぶりが見えない」問題を解決する、人事評価・賃金制度の作り方3つの曖昧と1つの不足(1/3 ページ)

リモートワーク体制の人事評価の問題として、しばしば挙げられるのが「部下の仕事ぶりが見えない」という点だ。原因は何なのか、どのような人事評価・賃金制度を用意すればいいのか。

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1.リモートワーク体制における人事評価の問題

 リモートワーク体制における人事評価の問題点として、しばしば挙げられるのが「部下(被評価者)の仕事ぶりが見えない」という点です。しかしあらためて考えてみると、「それなら通常勤務のときは部下の仕事ぶりをしっかり見ていたのか」という疑問が生じます。そして、このことがこれまでの人事評価の問題点を浮き上がらせています。

 この「仕事ぶりを見ている」というのは多くの場合、「頑張っているか」といった曖昧(あいまい)で感覚的なものを意味していました。そのために合理的で納得性のある評価ができていなかったのですが、それがリモートワークでさらに浮き彫りになったといえます。

 そのようになってしまっている原因として挙げられるのが、3つの曖昧さと1つの不足です。すなわち「職務、役割の曖昧さ」「評価基準の曖昧さ」「業務指示の曖昧さ」と「コミュニケーション不足」です。業務指示の曖昧さはさらに、業務の目的とアウトプット(内容、達成レベル)の2つに分けられます。

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写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

2.リモートワーク体制における人事評価の在り方

 質の高い人事評価を実施する上で必要なのは、「エビデンスに基づいた評価」と「検証可能な評価」の2つです。これらを実現するためには、人事評価基準を明確なものにしなくてはなりません。

 評価基準とは、会社が社員に対して求める要件を尺度化したものです。評価基準にはさまざまなものがありますが、分類整理すると次の4つになります。

能力:担当する職務を遂行するうえで必要な職務遂行能力

情意:職務への取り組み姿勢

行動:担当職務を遂行し、与えられた役割を果たすうえで取った行動

成果:半期や1年などの一定の期間に上げたアウトプット。目標管理制度と組み合わせることが多い

 リモートワークを前提にした場合、これまで以上に明確さが求められます。そのため、実際に担当している職務を基軸にするのが適切です。

 従って、職務との関連が強く意識されているという点、表に現れている要素に着目しているという点で、行動基準と成果基準の2つが中心になります。また、能力基準や情意基準による評価を行う場合であっても、実際に発揮された能力、取組姿勢を基準にすべきでしょう。

 評価基準は1つでなくてはならないというものではありません。行動基準や成果基準は、ある程度以上のレベルにある人材でないと適用は難しい面があります。まだ育成途上で成果などを問うのは酷という場合は能力基準、情意基準が適切である場合が多いです。

 この点は会社の人事戦略に依存します。旧来型の新卒一括採用、ジョブローテーションを重ねながらキャリアアップをさせていくというやり方を続けるのか、あらかじめ担当職務や期待成果を定めて人材を必要な都度採用したり、新卒定期採用であっても職務志向のやり方にしたりする方向に転換するのか、これらをミックスさせるのかなどによって、評価基準の在り方は異なってきます。

 しかし、リモートワーク勤務を命じる、あるいは許可する人材というのは、コロナ禍のような緊急時対応を別にすれば、自己管理ができ、自分の担当業務を自己完結できるというレベルにあることが最低限必要です。その点からも、行動基準、成果基準を中心に評価制度を設計するのが適切と思われます。

評価方法

 評価にあたって重要なのは前述の通り、エビデンスに基づくということです。そのために必須なのが評価事実の収集です。評価事実の収集方法は、(1)上司(評価者)による収集、(2)本人(被評価者)による申告と面談の2つになります。

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