年に1回、1日の休暇か1万5000円の手当かを選べる──「ワーク・ライフ・バリュー」を重視する会社の働き方:CEOを直撃(2/3 ページ)
置き型社食サービス「オフィスおかん」などを提供するOKANは、「ワーク・ライフ・バリュー・ストーリー制度」を導入している。年に1回、1日の休暇か1万5000円の手当のどちらかを取得できるのが特徴だ。
制度内容は、年に1回、1日の休暇か1万5000円の手当のどちらかを取得できるもの。休暇の場合は特別有給休暇を1日付与する。義務ではないが、取得者は社内Slackで、どのように手当または休暇を使ったか報告することが多い。このとき、取得した休暇または手当に各自で名前を付け、価値観を可視化することもある。
いくつかこれまでの例をあげると、恩師の銀婚式に参加するために休暇を取得した例や、夫婦で旅行をするための「夫婦時間休暇」、子どもの話を聞く時間を作る「子供1on1休暇」、「両親への恩返し休暇」などがあった。どちらかといえば休暇を取得する人が多いそうだが、休暇と手当をどちらかを選ぶかは各自の自由となっている。
「ワーク・ライフ・バリューにおいては、個人、法人の価値観のすり合わせが重要です。個人が自身の価値観を知ること、一緒に働く相手の価値観を知ること、会社の価値観を知ること。企業としてはそれらを知る機会を施策で作る必要がありました」(沢木さん)
この制度は、個人の価値観を応援するという目的に加えて、どのような休暇・手当にしたかを共有することで、社員の価値観を知り、また社員間同士で互いの価値観を知りあう機会になっている。
「ミッションファースト」を徹底
同社の特徴の一つが徹底したミッション重視だ。ミッションステートメント「働く人のライフスタイルを豊かにする」を実現するために各機能が役割分担をしている。スタートアップ企業として成長スピードを高く保つためには、各メンバーへの権限委譲が重要になる。
「権限移譲についてまず疑問として挙がるのが、それが正しい意思決定か? ということです。正しい意思決定のためには、『正しい情報をオープンにすること』と、『正しい決定しかさせない風土』の2つが大事だと考えています」と沢木さんは説明する。
情報をオープンにするために、社内の情報は財務諸表や残高などの財務情報も含めて社内に公開。また、Slack上のチャンネルは誰でも閲覧可能になっており必要な情報を自分で集めることができる環境を整えている。
また、毎週の全社会議「家族会議」で情報の共有に努めている(現在はオンラインで実施)。この家族会議で行われている「おかんトークプチ」は、1回に1人ずつ、15分で生い立ちや価値観について紹介するトークを行うもの。これも社員がもつ価値観を社内に共有する場になっている。
「正しい決定」については、沢木さんは「『正しくない決定』というのは、利害や立場を守るためなど、事業の目的とは一致しない理由で行われる決定のことです」と説明する。ミッションファーストとは、逆にいえばミッション以外の要素での決定はNGだということだ。
社内の状況を数値で把握
同社の人事部門にあたるヒューマンサクセスグループは、自社ツール「ハイジ」(https://hygi.jp/)を社内でも活用し、社内の状況をモニタリングしている。
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