「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
OECDの調査によると、日本人の平均年収は韓国人よりも低いという。なぜ日本人の給与は低いのか。筆者の窪田氏は「勤勉さと真面目さ」に原因があるのではないかとみている。どういう意味かというと……。
現状維持型の稼ぎ方
日本人の賃金が先進国の中でも際立って低いのは、今さら説明の必要がないだろう。では、なぜ日本の賃金は過剰なまでに低く抑えられてきたのかというと、企業側が過剰なまでに賃上げをしてこなかったからだ。
当たり前の話だが「賃上げ」は資本主義社会のなかでは、当然のように進められていかなければいけない。企業が成長をすれば、労働者に還元をする。それで経済がまわって、国民全体の豊かさも向上していく。実際、日本以外の先進国や、経済成長を果たしている新興国を見ればちゃんと賃金は上がっているのだ。
では、そんな当たり前のことがなぜ日本企業はできないのか。「デフレで成長できない」とか「法人税が高すぎる」とかなんだと個別の事情はあるが、全体的なことでいえば間違いなく、小さな規模の会社が過剰に多いからだ。約421万の日本企業のうち、中小・零細企業は99.7%を占めており、労働者のおよそ7割が働いている。
中小・零細企業はどうしても賃金が低くなる。もともと資金繰りも苦しいことに加えて、会社の規模からしても輸出や研究開発に力を注げないので、どうしても昔ながらのビジネスモデル、昔ながらの顧客を大事にする現状維持型の稼ぎ方になってしまう。人口減少で内需が縮小していくなかで、厳しい戦いを強いられているので賃上げどころではないのだ。
このように、日本の「過剰なまでに低い賃金」が「中小・零細企業が過剰に多い産業構造」に起因することが見えてくると、不思議なのはなぜこのように、バランスの悪い産業構造になったのかということだが、実はそこに「世界一の勤勉さ」が関わってくる。
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