テレワークで人事評価、どうする? 制度変更の注意点は? 弁護士に聞いた答えはというと……:2つの留意事項(2/3 ページ)
テレワークを実施する場合、従来のやり方では適切な人事評価を行うことが難しいといわれていますが、今後、人事評価制度を見直す必要があるのでしょうか。また、人事評価を行う際にはどのようなことに留意する必要があるでしょうか。
(1)能力評価
(2)成績評価
(3)情意評価
(1)能力評価では、判断力、企画力、技術・知識など、(2)成績評価では、仕事の質・量、達成度など、(3)情意評価では、熱意、協調性などが評価要素となり、これらを点数化・総合化して従業員の評価・査定が行われます。
具体的には、事業場での日常の勤務や実績を通じて、当該従業員の能力や仕事ぶりを評価する形で行われています。
3.テレワークとは
テレワークとは、労働者が情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)を利用して行う事業場外勤務をいいます。
一般に、テレワークの形態については、以下の3つに分類できるとされています。
(1)在宅勤務
労働者の自宅で業務を行う勤務形態
(2)サテライトオフィス勤務
労働者の属するメインのオフィス以外に設けられたオフィスを利用する勤務形態
(3)モバイル勤務
ノートパソコンや携帯電話等を活用して臨機応変に選択した場所で業務を行う勤務形態
4.テレワークにおける人事評価の方法(成果主義の導入)
これまで、日本では、テレワークを導入したとしても、週に1、2日程度の在宅勤務で、事業場に出勤して働く時間のほうが長い例が多く、従来型の事業場への出勤を前提とした人事評価制度を維持している事業者が多数でした。
しかし、テレワークを主たる勤務形態とする場合は、これを行う労働者の勤務実態の把握が難しく、事業場への出勤を前提とした人事評価制度では、適切な評価を行うことができないのではないかとの指摘があります。
そこで、このような本格的なテレワークの実施にあたっては、これに適した人事評価制度を再構築することが考えられます。一般的には、勤務態度や時間などは評価の中心におかず、成果を重視するやり方が、テレワークの評価には適しているといえます。
そうした評価方法として代表的なものに、「目標管理制度」があります。目標管理制度とは、職務目標を上司と部下とで話し合い、これを担当する部下自身が目標を設定し、達成方法を考え、主体的に行動するよう管理する制度であり、その目標達成状況に応じて評価を行うことになります。
よって、テレワークを主たる勤務形態とする本格的なテレワークの実施にあたっては、従来型の人事評価制度を見直し、目標管理制度等の成果を重視する制度を導入することが考えられます。
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