働く母に起きた“事件”──誤解だらけの「選択的夫婦別姓」と「家族の一体感」という呪い:河合薫の「社会を阻む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)
五輪・男女共同参画担当相になった丸川珠代氏が、反対する文書に名を連ねていたことで「選択的夫婦別姓」が話題になっている。「名前」と「キャリア」は密接にかかわっており、働く女性にとって重要な問題だ。ある女性は、旧姓のまま仕事を続けていたことで、子どもにまつわるトラブルを経験したという。
この発言は、今からちょうど一年前、愛媛県議会で行われた「選択的夫婦別姓制度導入を求める請願」への審査で、自民党の森高康行県議が発した意見です(以下、全文)。
「いろんなかたちで議論してきた課題ではあるが、子どもの殺人事件などの解説を聞くと、離婚ということで、パートナーとの事実婚が起因した虐待、殺人などが非常にニュースで目につくようなことも最近多いなということを私は感じている。本来の家庭、家族という価値観が日本社会で崩壊しつつあるのではないかと心配もしていて、私は安易な選択的夫婦別姓はより犯罪が増えていくようなことにもなりゃせんかなと心配をもつ立場であるので、より慎重にこのことについてあるべきだということを意見表明しておきたいと思う」(森高氏)
この意見を読めばお分かりの通り、森高氏は「選択的夫婦別姓制度」の内容を全く理解していないのです。
森高氏の発言では「パートナーとの事実婚が起因した虐待」と指摘されてますが、選択的夫婦別姓は「事実婚」では決してありません。むしろ逆です。選択夫婦別姓が認められないから、事実婚を選ぶ人は少なくありません。
また、森高氏は新聞社の取材に対して「日本社会で離婚が多くなり、本来あった家族の価値観が崩壊しつつある。それが目につくような事件が多い」と答えたと報じられています。つまり、森高氏の思考を整理すると、「選択的夫婦別姓を認める→『離婚』が増える→『事実婚』が増える→虐待や殺人が増える」ということを懸念している、ということなのでしょう。
森高氏の「犯罪が増える」という意見の背後には、反対派が好んで主張する「家族の一体感がなくなる」というロジックが存在しているのでしょうが、増えているのは、むしろ「同じ姓」を名乗る家族間の殺人事件です。
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