えっ、まだ? なぜ日本企業の意思決定は「遅い」のか:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
欧米企業の意思決定は速いのに、なぜ日本企業は遅いのか。こうした言葉を聞いたことがあると思うが、本当にそうなのか。
衰退させている原因
このような「現状維持」「終身雇用」「同族経営」と三拍子そろった人たちが、国会でヤジを飛ばし合って熾烈な「社内政治」を繰り広げているのが、日本の政治だ。何か問題提起をしたり、何かを決めるべきだと主張すると野党やマスコミから吊るし上げられるので、議員の立場に固執する人ほど沈黙する。
大臣などの立場になれば、さらに現状維持に走るので、官僚が徹夜でつくった原稿を棒読みして、揚げ足を取られないようにガマン比べのように同じ言い訳を繰り返す。日本企業の「ムダに長い会議」を、国会議事堂で再現しているだけなのだ。
残念ながら、意思決定が早くなる要素が全くない。
人口が右肩あがりで増えて、それにともなって経済も成長をしている時代までは、現状維持の企業と、現状維持の政治家が溢れていても、日本はハッピーだった。しかし、人口減少に転じたことで、その社会秩序はガラガラと崩れてきている。
「日本企業は民主的だ」「意思決定が遅いのも悪いことばかりではない」など、とにかく日本を正当化したい気持ちは痛いほどよく分かるが、こうなってくるともうそんなに時間の猶予はない。そろそろこの国を衰退させている本質的な原因を直視すべきときではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
関連記事
- 「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか
OECDの調査によると、日本人の平均年収は韓国人よりも低いという。なぜ日本人の給与は低いのか。筆者の窪田氏は「勤勉さと真面目さ」に原因があるのではないかとみている。どういう意味かというと……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - 「70歳まで会社にしがみつく人」が結局、会社を弱体化させてしまうワケ
定年を引き上げるニュースが相次いでる。現行の60歳から65歳にする企業が増えてきているわけだが、筆者の窪田氏はこの動きに懸念を抱いている。「長く働くことができていいじゃないか」と思われたかもしれないが……。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。 - 登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.