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ヤフーとLINEが経営統合、川邊・出澤共同代表に聞く――ZホールディングスにあってGAFAにない優位性とは?オンラインとオフラインの垣根をなくす(2/2 ページ)

ヤフーを傘下に置くZホールディングスとLINEが経営統合して、新生Zホールディングスが誕生した。GAFAが日本でも大きな市場シェアを獲得していて、これに打ち勝つのは容易ではない。どのような施策を打つことで、ライバル企業に勝るネットサービス企業になろうとしているのか。共同最高経営責任者(Co-CEO)に就任した川邊健太郎氏と出澤剛氏にインタビューした。

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5年間で5000人の技術者を採用

――経営統合しましたが、社風の違いを克服して、経営統合のシナジー効果を出すのに不安はないですか。

川邊氏: シナジー効果を出すためには、まずお互いにプロジェクトを回していくしかありません。根底は同じネット企業なのでそれほどの違いはないと思っています。当初は部屋を同じにするとか、組織を同じにするとかいろいろなことを考えていましたが、コロナの状況もありフルリモートワークの環境になりました。ビデオ会議をやっていく中で、おのずと統合した会社の文化ができていくのではないでしょうか。

出澤氏: 多様なプロジェクトを一緒に進める中で、新しい会社の文化が出てくると思いますし、良い化学反応を生み出していきたいです。

――今後、5年間で5000人のデータサイエンティストなど技術者を採用すると言われましたが、数千万円のマーケット価格で採っていくというお考えですか。

川邊氏: AI(人工知能)の分野でトップ100に入るような優れた人材をマーケット価格で採ってくることもあるかもしれません。また、大学院卒やポスドクの人も積極的に採用していきたいと考えています。

――優秀な技術者を採用するには何か魅力がないと採れないと思いますが、どこをアピールしていきますか?

川邊氏: 大学に在籍しているコンピュータサイエンスや数学の研究者の方にとっては、データサイエンスを研究する際に自分の考えた理論を試すためのデータや環境などが十分でない場合もあります。しかし当社に来てもらえば、データを社会実装しながら自分の理論を試すことができます。それが当社で働く魅力になればよいと考えています。

――例えばNECが新卒に年収1000万円も可能な制度を設けたり、富士通が中途で年収3500万円も可能にする制度を設けたりしていますが、そういった制度を作る考えはありますか?

川邊氏: 特別な制度を設けようとするのは日本的雇用慣行の結果だと思います。日本企業は同僚や年次などを意識して報酬を決めようとするので「特別枠」を設けるのだと思いますが、当社はあくまでマーケットバリュー、世界の人材相場を見ながら採用しています。ですから会社組織として特別枠のようなものを設けて高給で採るのではなく、あくまで優秀な人材がいればマーケット価格で個人を採用していきます。

出澤氏: LINEはすでにグローバルな視点でシリコンバレーなどから、優秀な人材を数千万円の報酬を提示して既に採ってきていますし、実際にそうした事例もあります。マーケットバリューによって決めています。今後も同じ方針で採用を進めていきたいと考えています。

――新生Zホールディングス傘下の企業の給与体系はどうなるのですか。

川邊氏: ヤフーの事例で話しますと、新卒を採用していますので初任給のような制度は残っていますが、数年後は「どのようなスキルがありますか」というマーケット価格で決まってくるようになると思います。このため、賃金体系は(メンバーシップ型とジョブ型との)ハイブリッド型になります。

出澤氏: 全く同じ考えです。

ZホールディングスにあってGAFAにない優位性

――大きな会社をマネジメントする上で、リーダーとして日ごろから気に掛けていることはありますか。

川邊氏: 事業分野が多岐にわたっていますから、それぞれの仕事の目的をはっきりさせて、ビジョンを提示するようにしています。またビジョンを提示した後に、そのあかつきに何が生まれるのかを実際にメンバーと確認し合うことが大事だと思います。

出澤氏: 2万人規模の会社を前に進めていくためには、目的を達成するための作戦とゴールを、それぞれが共有することが必要だと思いますね。日本からアジアへ、世界へという大目標がありますから、ここが重要になると考えています。

――Zホールディングスの親会社はソフトバンクグループで、同社の傘下には携帯電話事業を手掛けるソフトバンクがあります。グループ会社に携帯電話事業を持っている点はGAFAにない優位性で、貴社が発展していくためのポイントになると思いますが、GAFAに対抗していくために、これをどのように生かそうと考えていますか。

川邊氏: それは非常に有利な点だと考えています。特に日本は携帯電話キャリアに対するユーザーのロイヤリティーが高い。当社も既にこれを活用をしていますが、ソフトバンクユーザーであればPayPayボーナスが倍になるといったやり方をすれば、マーケティングセグメントもやりやすくなります。またソフトバンク側にとってはユーザーの引き留めにもなっています。つまりキャリアと共同マーケティングができるメリットは大きいのです。

 また、携帯キャリアとしてのブランドのロイヤリティーを活用して、ヤフーは「ワイモバイル」、LINEは「LINEMO」いうモバイル事業を展開できています。ユーザーの囲い込みもしやすいのです。また、5GやIoTなど新しい技術は携帯会社主導で進歩していくので、これを(ソフトバンクから)いち早く教えてもらって新しいサービスの開発ができるのは、GAFAにもBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)にもないことです。

出澤氏: インターネットとキャリアの組み合わせは強力で、地の利があり、今後の戦いを有利に進めていけるのではないかと思います。

日常生活に欠かせない企業グループに

 以上がインタビュー内容だ。Zホールディングスは、国内で200超のサービスを提供し、国内総利用者数は3億超、国内総クライアント数は約1500万、自治体との総連携案件数は3000超となり、グループ従業員は2万3000人にもなる。LINEとの統合により「情報」「決済」「コミュニケーション」という日常生活に欠かせない3つの起点を持つ企業グループとなった。

 Zホールディングスの中核企業の1つであるヤフー(Yahoo! JAPAN)及びLINEを中心とした「検索・ポータル」「広告」「メッセンジャー」を「根幹領域」と定めて引き続き推進するとともに、特に社会課題が大きくインターネットで、その課題解決が見込める領域である「コマース」「ローカル・バーティカル」「Fintech(フィンテック)」「社会」の4つを「集中領域」と定め、集中的に取り組むとしている。

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