中小企業でも始めたい労働保険・社会保険の電子申請:留意点は(2/4 ページ)
労働保険・社会保険関係の電子申請は、数年前に比べて格段に扱いやすくなっており、中小企業でも積極的に利用したいところです。ここでは、電子申請の仕組みと留意点を解説します。
労働保険・社会保険に関する手続きはそのほとんどが電子申請に対応しており、企業として日常的に発生する手続きは、電子申請だけで完結させることが可能です。
24時間利用できますので、窓口の開いている時間帯を気にする必要もありません。もちろんテレワークによる自宅等からの申請も可能です。
近年は行政もデジタルファーストを掲げており、電子申請をメインとした業務にシフトしつつあります。手続き処理においても、書面よりも電子申請のほうが比較的早く完了する状況です。
(1)事業主や従業員の印鑑はどうなるか
すでに書面申請であってもほとんどの押印は省略が可能になっていますが、電子申請においては、電子証明書にて電子署名を行います。ただし、2020年4月から、社会保険分野にてGビズIDの利用が開始されたことにより、電子証明書がなくても電子申請が可能になりました。
どの方法で申請するかにもよりますが、GビズIDで申請することができる手続きも多くあります。電子証明書は取得に費用がかかりますが、GビズIDであれば無料で作成できます。
今後、行政手続きに関しては社会保険関連以外も、原則としてGビズIDに対応していく方針ですので、電子証明書がない場合は、GビズIDを利用することも選択肢となります。
従業員の本人印に関しては省略が可能です。手続きに関する同意書は社内で得ておく必要がありますが、申請においては、それらの添付は省略できます。
(2)提出した手続きの管理はどうなるか
e-Govを利用する場合は、まずユーザーIDを作成します。そのユーザーでログインして申請した手続きについては、管理画面(マイページ)から処理状況の確認が可能です。手続きごとに到達番号という番号が振られるため、行政への問い合わせも、その番号を伝えるだけでOKです。
(3)1件ずつしかできないのか
取得届や喪失届など、一度に複数発生するような手続きは、1件ずつの申請方式のほかに、連記式という方法が用意されています。これにより、所定の形式で作成されたCSVファイルを添付することで、一度に複数件の申請が可能です。利用している給与システムなどで、このCSV形式のデータ作成に対応しているのであれば、それをそのまま利用できます。また、「届書作成プログラム」を利用する方法においては、このCSVデータ形式による手続きに対応しています。
算定基礎届や月額変更届、賞与支払届についても、CSVデータの添付に対応しています。従来からCD-ROMで提出している会社も多いと思いますが、それと同様の形式です。これについても、「届書作成プログラム」を利用したデータ作成や申請が可能です。
(4)手続き後の書類はどのように戻るのか
手続き後に、日本年金機構やハローワークなどから発行される公文書は、電子公文書という電子データで戻ります。例えば、本人に交付する雇用保険被保険者証や離職票は、PDF形式で発行されます。会社はそれを印刷し本人に渡します。会社側の控え書類や決定通知書も電子データになりますので、ファイリングして保管する必要がなく、社内のサーバ上で管理が可能です。支店や店舗など離れた場所であっても、電子データなら受け渡しに時間もコストもかかりません。
準備から利用開始までの段取りとは
では、電子申請を始めるにあたって、どのような準備をしておけばよいのでしょうか。ここでは、2020年11月にリニューアルされたe-Govの利用手順を基に説明します。
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