国内に75万室! 供給過剰のビジネスホテル インバウンド消失で生き残る策はあるのか:コロナ禍だけが原因じゃない(5/5 ページ)
ホテルが供給過剰? コロナ禍でインバウンド消失、国内需要も激減とあっては当然のことと思われるだろう。しかし筆者は、供給過剰というワードは、コロナ禍ではなく“コロナ禍前の状況”を表していると指摘する。
同様に具体的なケースは他のブランドでも散見するが、やみくもにインバウンドの取り込みに走らず、当初からコントロールしてきたホテル、日本人が前提となる会員へのベネフィットを手厚くしてきたホテルでも底堅いリピーターの支持といった傾向が指摘できる。総体的に見ると旅行者は激減しており、特にリーズナブルな価格帯のビジネスホテルは苦戦を強いられていることは言わずもがな、だからこそ底堅く支持されてきたホテルの強さが際立つ。
過当競争が続く中、ビジネスホテルが支持される最大の理由であった利便性や機能性はもはやデフォルトとなった。主要顧客だった出張族に加えてファミリーなどの日本人観光旅行者も鑑みつつ、相応のクオリティー・サービスを提供してきたビジネスホテルが今後ますます注目されていくだろう。課題は出店を続けることによる店舗間クオリティーの均一化といったジレンマやセグメンテーション・ターゲティング、さらにはブランドが持つ資産価値「ブランドエクイティ」という点でも、言葉だけではない“差別化”をビジネスホテルはどのように遂げていくのか、今後も注視していきたい。
著者プロフィール
瀧澤信秋 (たきざわ のぶあき/ホテル評論家 旅行作家)
一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。
日本を代表するホテル評論家として利用者目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。その忌憚なきホテル評論には定評がある。評論対象は宿泊施設が提供するサービスという視座から、ラグジュアリーホテルからビジネスホテル、旅館、簡易宿所、レジャー(ラブ)ホテルなど多業態に渡る。テレビやラジオ、雑誌、新聞等メディアでの存在感も際立ち、膨大な宿泊経験という徹底した現場主義からの知見にポジティブ情報ばかりではなく、課題や問題点も指摘できる日本唯一のホテル評論家としてメディアからの信頼は厚い。
著書に「365日365ホテル」(マガジンハウス)、「最強のホテル100」(イースト・プレス)、「辛口評論家、星野リゾートへ泊まってみた」(光文社新書)などがある。
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