オンボーディングは「内定承諾時から始まっている」! 入社辞退・早期退職を防ぐコツ:これからの採用戦略を考える(3)(1/3 ページ)
転職が一般的になり、オンボーディングの重要性が高まっている。入社時代や早期離職を防ぐため、内定承諾時から計画的にコミュニケーションをとることが大切だ。人事はどのような施策を行うべきか。
オンボーディングは、採用した社員の受け入れ、定着、戦力化を早期に行うための施策だ。
欧米において一般的だったこの概念を、日系企業でもよく耳にするようになったのはここ数年。国内の外資系企業では、外資系の大手人材紹介会社の日本参入が増加した約20年前頃から本格化し始めた。
当社(エンワールド・ジャパン)が、2021年3月に外資系企業・日系グローバル企業の人事・採用担当者に行った調査では「オンボーディング」の認知度は8割、オンボーディングを「行っている」と回答した企業は7割だった。オンボーディングの認知度、実施度ともに外資系企業が一歩リードしていた。
以前と比べ転職が一般的になったことが、オンボーディングの概念が広まった背景だ。旧来の日本の終身雇用制度を前提とした新卒一括採用では、入社後数週間〜1カ月程度、新入社員を対象に導入研修を行い、企業の歴史や文化、仕事の進め方などを一律で教育してきた。
一方、中途入社者は入社時期がまちまちで、企業は年に何度も新しい社員を迎える必要がある。また、中途入社者は社会人経験がある。経験の長さ、バックグラウンド、専門性などは人によってさまざまだ。特徴の異なる全ての中途入社者に、早く会社になじみ、活躍してもらうため、オンボーディングの重要性が高まっている。
採用の本来の目的は「採用した人が活躍し、企業の利益に貢献する」ことだ。この目的達成に向けてオンボーディングは大きな役割を果たす。うまくできている企業では定着率が上がり、うまくいっていない企業では離職が増え、再び採用が必要になる。入社辞退や早期離職が起きると、採用にかけた多大なコスト、時間、労力は全て水の泡となる。
オンボーディングは入社者のためだけの施策ではない。早期戦力化や長期の定着でより価値を生み出してもらうために、企業にとっても必要な施策なのだ。
スタートは内定承諾時
オンボーディングを入社後の受入れ施策と考えている企業は少なくない。しかし、オンボーディングは内定承諾後から、既にスタートしている。入社するまでの時間の使い方も、入社者のその後を左右する。
企業の人事・採用担当者は、内定承諾をもらって安心しきってはいけない。働きながら転職活動をしている方の場合は特に、転職先の企業に入社するまでの時間が空いてしまう。その間、転職者は本当に転職して良いのか、この企業で良かったのかと、不安を覚えることがある。昨今、オンライン面接も主流となっているが、採用活動全般をオンラインで実施した場合、どのような会社でどのような人たちと働くのかが分からずに、孤独を感じるケースも多い。
この不安を払拭(ふっしょく)するために有効なのが、オフィスの雰囲気を伝えるための社員との交流だ。一緒に働く人との顔を合わせを行うとチームからの歓迎を伝えることができ、入社者が転職先で働く士気やモチベーションを高めることにもつながる。
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