飲食店は“大荒れ”なのに、なぜニトリはファミレスに参入したのか:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
ニトリがファミレス事業に進出した。店名は「ニトリダイニング みんなのグリル」。、「お、ねだん以上。」のメニューが並んでいるわけだが、なぜ飲食店に逆風が吹き荒れているタイミングで出店したのか。背景にあるのは……。
目の前に迫ってきている「脅威」
ニトリの経営を主導する似鳥昭雄会長は、今回ファミレス事業に参入した理由を、「衣食住で事業を展開したい」と述べている。
確かに、ニトリは2019年から女性向けアパレルブランド「Nプラス(N+)」をスタートし、今年3月31日現在17店舗を展開し、今後はさらに5店舗を新規出店する計画を明らかにしている。「衣」を充実させているのだから、「食」のほうも早いところ広げていく理屈自体は非常によく分かる。
ただ、個人的には、そういう中長期的なビジョンのためというよりも、目の前に迫ってきている「脅威」に対する反撃という意味合いが強いのではないかと考えている。
その脅威とはズバリ、ホームセンター業界の王者、カインズだ。
実は昨年からカインズによる「首都侵攻」が始まっている。昨年7月、DIYや生活雑貨に特化した都市型店舗「Style Factory」が、ららぽーと海老名店に首都圏として初出店。翌月には横浜の、みなとみらい東急スクエア店でもオープンした。
広大な売り場と駐車場を必要とする巨大ホームセンターを都市部で新規に出店することはかなりハードルが高いので、これまで首都圏、特に都内でカインズの勢力は強くなかった。16年に東京・南砂に旗艦店としてカインズ南砂町SUNAMO店をオープンし、18年に関東最大級の店舗「カインズ新座店」をオープンさせたものの、横浜・みなとみらいエリアのような繁華街への進出はできていなかったのだ。
しかし、昨年の「Style Factory」という新しい店舗スタイルによってそれが可能になった。それはつまり、カインズも、ニトリやIKEAのように渋谷や銀座という都内の繁華街エリアにも進出することができるということだ。
これがニトリにとって、極めて深刻な「脅威」であることはいうまでもない。ニトリの生活雑貨は無印良品やIKEAとよく比較されるが、ネット上などでコスパや使い勝手のいい機能性などで直接的なライバルとしてよく目されているのが、実はカインズだからだ。
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