飲食店は“大荒れ”なのに、なぜニトリはファミレスに参入したのか:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
ニトリがファミレス事業に進出した。店名は「ニトリダイニング みんなのグリル」。、「お、ねだん以上。」のメニューが並んでいるわけだが、なぜ飲食店に逆風が吹き荒れているタイミングで出店したのか。背景にあるのは……。
カインズ侵攻に備えた反撃
これまで東京都内の客がなかなか手に取ることができなかったカインズのアイテムが繁華街の商業施設で並ぶようになれば、ニトリの地位が脅かされることは間違いない。そうなるとニトリとしてやるべきは、カインズ侵攻に備えた反撃だ。
昨年、ニトリがDCMとの争奪戦に競り勝った「島忠ホームズの買収」もその一つではないかと目されている。首都圏を中心に販売網のある島忠ホームズは中野、仙川、平井、葛西など都内にも店舗を持つ。これらを手中に収めれば、カインズが都心へ本格的に進出してきた際の迎撃の拠点となる。実際、今年の6月には既存店を改修して「ニトリホームズ」(3月31日の決算説明会で明かした候補名)をオープンする予定だという。
つまり、コロナ禍という大逆風のなかでも、リスクのあるファミレス参入を進めたのは、ニトリとして急ピッチで「対カインズ反撃体制」を整えなくてはいけない事情もあったのではないか、と個人的には思うのだ。
なんてことを言ってしまうと、「ニトリにとってカインズが脅威だとしても、だからといってファミレス参入の理由をそこに結びつけるのはさすがに妄想が過ぎるだろ」とお叱りをいただくかもしれないが、もしニトリがカインズを意識して、“がっぷり四つ”で戦っていこうと思ったら、ここはいち早く整備をしなくてはいけない分野なのだ。
似鳥会長が目指す「衣食住での事業展開」を既に達成してしまっているのが、カインズだからだ。
ご存じのように、カインズは、群馬県地盤のスーパー、ベイシアを中核とするベイシアグループの一員だ。同じグループ内には、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのワークマンがあるし、カインズ内のフードコート「カインズキッチン」などを運営する外食企業カインズフードサービスもある。
さらににいえば、家電量販店のベイシア電器、コンビニのセーブオン、カー用品のオートアールズ、ベイシアスポーツクラブなどもあり、全国46都道府県でグループ全28社が1904店舗を展開している。非上場がゆえあまり全国的に話題にはならないが、昨年ベイシアグループは総売上1兆円を達成した。
関連記事
- こんなに頑張っているのに、なぜ日本だけGDPが回復しないのか
日本経済の復活がうかがえるような、データがなかなか出てこない。先進国と比べて、GDP増加率は低く、賃金も低い。多くのビジネスパーソンは懸命に働いているのに、なぜパッとしないのか。筆者の窪田氏は「日本社会のシステムがブラック企業化しているから」と見ていて……。 - なぜ京急で社員からの「内部告発」が相次いでいるのか
「京急愛」なんて言葉もあるほど、多くの鉄道ファンから慕われている「京急電鉄」。その京急に対して、内部告発記事が続いている。その背景に何があるのか。筆者の窪田氏は……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - 「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか
OECDの調査によると、日本人の平均年収は韓国人よりも低いという。なぜ日本人の給与は低いのか。筆者の窪田氏は「勤勉さと真面目さ」に原因があるのではないかとみている。どういう意味かというと……。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.