飲食店は“大荒れ”なのに、なぜニトリはファミレスに参入したのか:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
ニトリがファミレス事業に進出した。店名は「ニトリダイニング みんなのグリル」。、「お、ねだん以上。」のメニューが並んでいるわけだが、なぜ飲食店に逆風が吹き荒れているタイミングで出店したのか。背景にあるのは……。
ファミレス参入の理由
そんな知られざる「衣食住の巨人」ともいえる、ベイシアグループの中核企業・カインズがいよいよ首都に攻め込んできたのだ。これを単に「ホームセンターが進出してきた」と捉えるのはあまりにもお気楽すぎる。
グループメリットを生かして、首都圏でも絶大な人気を誇るワークマンプラスなどとコラボすることもできるだろう。カインズキッチンを進化させた都市型フードコートを併設することもできるだろう。
また、米国の体験型店舗「b8ta」とコラボしたように、カインズ独自開発のユニークなアイテムを実際に手に取ってもらい、それをマーケティングや開発に生かすRaaS(リテール・アズ・ア・サービス)の拠点を整備することもできる。中長期的には生活雑貨、衣料品、飲食店、さらには食料品までを同一のコンセプトのもとで提供する、「ライフスタイル総合店舗」を出すことも可能だ。
つまり、カインズは現時点のニトリではなかなかできない方向性の戦い方ができるだけではなく、似鳥会長が目指す「衣食住での事業展開」を可能とする力もあるのだ。ここを迎え撃つニトリとして、まずは「衣」と「食」は急ピッチで追いつかなくてはいけない。
「衣」に関して、「N+」は女性向けアパレルなので早急に男性向けがほしい。幸いにも、買収をした島忠ホームズにはオリジナルのアパレルブランド「カラビナ」がある。こちらは「プロ仕様のワークウェア」を掲げながら、無印良品のようなベーシックなデザインで、ワークマンのアイテムと比べても機能性はそれほど遜色はない。マーケティングや宣伝にそれほど力を入れているとは思えないので認知度はあまりないが、「ニトリホームズ」のシナジー効果で大化けしないとも限らない。
となってくると、やはり次に必要となってくるのが「食」ではないのか。それこそが、これまで敷地内に大手ファミレスや人気チェーンを誘致する方向性だったニトリがこのタイミングで、ファミレスに参入をしなくてはいけなくなった最大の理由なのではないか、と個人的には思っている。
関連記事
- こんなに頑張っているのに、なぜ日本だけGDPが回復しないのか
日本経済の復活がうかがえるような、データがなかなか出てこない。先進国と比べて、GDP増加率は低く、賃金も低い。多くのビジネスパーソンは懸命に働いているのに、なぜパッとしないのか。筆者の窪田氏は「日本社会のシステムがブラック企業化しているから」と見ていて……。 - なぜ京急で社員からの「内部告発」が相次いでいるのか
「京急愛」なんて言葉もあるほど、多くの鉄道ファンから慕われている「京急電鉄」。その京急に対して、内部告発記事が続いている。その背景に何があるのか。筆者の窪田氏は……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - 「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか
OECDの調査によると、日本人の平均年収は韓国人よりも低いという。なぜ日本人の給与は低いのか。筆者の窪田氏は「勤勉さと真面目さ」に原因があるのではないかとみている。どういう意味かというと……。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.