1000店→150店に! なぜマクドナルドはウォルマートから“離れている”のか:両社の関係が崩れ(2/4 ページ)
米国のウォルマート店内に、マクドナルドはたくさんの店舗を構えてきたが、いまビジネスの転換期を迎えているようだ。ピーク時には1000店ほどあったが、今年の夏には150店に。なぜマクドナルドはウォルマートから離れているのか。その背景に……。
ウォルマート内に店舗を置く必要性
マクドナルドにとって、ウォルマート内で営業するメリットは、客足の多さにある。それが、新型コロナによって、流れが急激に変わってしまった。多くの人がネット通販を利用したり、ストアの外でクルマに乗ったまま購入商品を受け取ることができる「カーブサイドピックアップ」と呼ばれるサービスを利用するようになったりしたことで、ウォルマート内に店舗を置く必要性を見出せなくなった。
さらにウォルマート内のマクドナルドが、ドライブスルーを併設していなかったことで客を呼び込めず、ダメージが大きかったことも影響している。なぜなら、コロナ感染がピークだった昨年春には、米マクドナルド全体の売り上げの約90%がドライブスルーの利用から発生していたからだ。ドライブスルーが同社にとって重要なチャンネルとなっていたのだ。
今回、うまくいっていた関係がコロナ禍で崩れたわけだが、もちろん、ウォルマートとマクドナルドの関係はずっと順調だったワケではない。パートナーシップを組んだ90年代から、これまでにもいくつか危機があった。
その一つが、2000年代にトレンドとなったヘルシー嗜好(しこう)の流れだ。ファストフード業界でも、野菜をたっぷり使用し、低カロリーでヘルシーなサンドイッチが売りの「サブウェイ」が台頭してきたのがこの時期になる。
それまで、ウォルマート内で営業するファストフード店はマクドナルドだけだったのが、2000年半ばころからサブウェイの店舗が急激に拡大していった。
消費者の健康志向に対応するように、ウォルマートでもオーガニック食品などヘルシーな食品を取り扱うようになって、従業員の健康管理にも力を入れていた時期でもある。そのため、マクドナルドの新規店舗数を上回る勢いで、サブウェイの店舗が次々にウォルマート内にオープンしていった。
ちなみに、ウォルマート内のファストフード店を利用しているのは買い物客だけではなく、およそ3分の1の売り上げは従業員によるものだという。こういった背景も少なからず影響していると思われる。
当然、マクドナルドも健康志向のトレンドに対応するため、メニューの見直しを行うなど、ブランドのイメージアップを試みて危機を乗り越えてきた。しかし、今回の新型コロナによる影響は、同社に大きな決断を促したようだ。
関連記事
- 「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか
OECDの調査によると、日本人の平均年収は韓国人よりも低いという。なぜ日本人の給与は低いのか。筆者の窪田氏は「勤勉さと真面目さ」に原因があるのではないかとみている。どういう意味かというと……。 - 飲食店は“大荒れ”なのに、なぜニトリはファミレスに参入したのか
ニトリがファミレス事業に進出した。店名は「ニトリダイニング みんなのグリル」。、「お、ねだん以上。」のメニューが並んでいるわけだが、なぜ飲食店に逆風が吹き荒れているタイミングで出店したのか。背景にあるのは……。 - チキンサンドに何が起きているのか 全米で人気爆発の背景
米国のファストフードで、チキンサンドが盛り上がっている。話題の商品を手に入れるために、長蛇の列ができることも珍しくないが、そもそもなぜチキンサンドが売れているのか。以前からあったメニューなのに……。 - 永遠の輝きに陰り ダイヤモンド業界が衰退している
ミレニアル世代(1981年から96年に生まれた世代)の購買行動に、危機感を抱いている人たちがいる。ダイヤモンド業界だ。ミレニアル世代は結婚適齢期に差し掛かっているので、ダイヤは売れているはずだが……。 - 自粛ムードが漂っているのに、なぜ星野リゾートやドーミーインは続々と開業するのか
新型コロナウイルス感染拡大を受けて、ホテル業界が苦しんでいる。この先、一体どうなるのか。星野リゾートとドーミーインの取り組みを見ると……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.