コロナ禍でも従業員が結束して客数2倍! “収束後”を見据えて飲食店が取り組むべき「重要事項」とは:アフターコロナに備える(6/6 ページ)
度重なる緊急事態宣言で飲食業界が苦しんでいる。こんな時だからこそ、「ビジョン」が大切だと筆者は主張する。危機を乗り切り、アフターコロナを勝ち抜くために何が必要なのか。
涙を流しながら熱い議論を交わす
具体的にどのような取り組みをしたのでしょうか。2020年、緊急事態宣言の真っ只中にオープンしたお店では、テークアウトメニューや当日の限定メニューなどを、多い日で1日10回以上もインスタグラムのストーリー機能で発信しました。また、時間帯によって変わるお店の前の人の流れに合わせた対応をしました。具体的には、店舗前の看板に掲載する内容や、看板の向きを小まめに変更したのです。こうしたデジタルマーケティングとアナログマーケティングの両輪をフル回転させていきました。その他にも、あらゆる取り組みをスピーディーに実行することで、近所のお客さまの利用が徐々に増えていきました。
そして、来店されたお客さまに対しては徹底した感染対策をした上で、大きな感謝の気持ちも込めて、丁寧な接客を徹底。その結果、口コミでお店の評判が広がり、今ではオープン直後と比べて2倍以上ものお客さまが来店するようになりました。
この1年間、A社の店舗では、コロナ禍の営業方針などを巡って、ホールスタッフとキッチンスタッフが泣きながら熱い議論を交わすような光景も幾度となく見られました。全てのスタッフがコロナという誰も経験したことのない危機の中で、自分達の仕事の意味、価値を考えて苦しんでいました。
こうした各店の取り組みの甲斐(かい)もあり、コロナ禍にもかかわらず、全店で過去最高の数のお客さまをお迎えするまでに回復したのです。
また、A社では、21年4月には初めての新卒採用も実施。さらに22年の新卒採用に向けた準備も開始しました。世の中では「飲食業界は厳しい」というニュースがあふれていますが、A社では自社の経営理念やビジョンをしっかりと伝えています。そのおかげで、その理念やビジョンに共感した複数の学生が新卒採用にエントリーしている状況です。
コロナ禍のような経営危機においては、どうしても緊急性が高い「目先の対策」に気をとられがちです。しかし、本当に今取り組まなければならないのは、緊急性は低いが重要度が高い「自社の在り方の再認識」なのかもしれません。
最後になりますが、私はこのコロナ禍という誰も経験したことがない危機的状況の中で、日々全力で頑張っている飲食店スタッフや、あらゆる業界の最前線の現場で働く皆さんに応援と感謝の気持ちを伝えたいと思います。
本記事が少しでも皆さまのご参考になれば幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
著者プロフィール
三ツ井創太郎
株式会社スリーウェルマネジメント代表。数多くのテレビでのコメンテーターや新聞、雑誌等への執筆も手掛ける飲食店専門のコンサルタント。大学卒業と同時に東京の飲食企業にて料理長や店長などを歴任後、業態開発、FC本部構築などを10年以上経験。その後、東証一部上場のコンサルティング会社である株式会社船井総研に入社。飲食部門のチームリーダーとして中小企業から大手上場外食チェーンまで幅広いクライアントに対して経営支援を行う。2016年に飲食店に特化したコンサルティング会社である株式会社スリーウェルマネジメント設立。代表コンサルタントとして日本全国の飲食企業に経営支援を行う。最近では東京都の中小企業支援事業の選任コンサルタントや青森県の業務委託コンサルタントに任命される等、行政と一体となった飲食店支援も積極的に行っている。著書の「飲食店経営“人の問題”を解決する33の法則(DOBOOK)」はアマゾン外食本ランキングの1位を獲得。
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