2015年7月27日以前の記事
検索
連載

内燃機関から撤退? そんな説明でいいのかホンダ池田直渡「週刊モータージャーナル」(8/8 ページ)

ホンダは新目標を大きく2つに絞った。一つは「ホンダの二輪・四輪車が関与する交通事故死者ゼロ」であり、もう一つは「全製品、企業活動を通じたカーボンニュートラル」。そして何より素晴らしいのは、その年限を2050年と明確に定めたことだ。ホンダは得意の2モーターHVである「e:HEV」を含め、全ての内燃機関から完全卒業し、EVとFCV以外を生産しない、世界で最も環境適応の進んだ会社へと意思を持って進もうとしている。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-
前のページへ |       

 どうしてそんなことになったのか? 三部社長の言葉の端々ににじむのは「2050年のカーボンニュートラルを目指すのであれば」というフレーズで、それはつまり、そこを前提として考えなさいという課題を政府から突きつけられているということを意味する。それについてはできるとかできないとかを考えることを許さないという意味である。いわゆる所与の条件としてこの枠組みを決められてしまえば、バックキャストでスケジュールを考えるしかなくなる。だからスケジュールだけが決まり、そのための具体策が何もないという馬鹿馬鹿しいことが起きるのである。

 この問題、ホンダにも猛省を促したい。何より、こんな無理難題をお上から突きつけられたとしたら、技術の正論で反論すべきだったのではないか? それをせずに、ラクをして、とりあえず可能性すら分からないスケジュールを引いてみせるのがホンダのチャレンジスピリットなのか? 遠い昔、自動車貿易自由化に際して、通産省から押しつけられた自動車メーカー再編成合併案を否定すべくF1に打って出て、ホンダはひとりでやれる気概を示した時とは雲泥の差ではないか? お上へのお追従でホンダの精神を捨ててもいいのか?

 そしてもっと悪いのは政府である。「いいからやれ」「できるかできないかではない。やるんだ」。それはブラック企業の常套(じょうとう)手段であり、企業に対する政府のパワハラである。本来であれば自動車産業の550万人の力を集結して逆襲すべき時だと筆者は強く思う。こんな横暴を許してはならない。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る