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内燃機関から撤退? そんな説明でいいのかホンダ池田直渡「週刊モータージャーナル」(7/8 ページ)

ホンダは新目標を大きく2つに絞った。一つは「ホンダの二輪・四輪車が関与する交通事故死者ゼロ」であり、もう一つは「全製品、企業活動を通じたカーボンニュートラル」。そして何より素晴らしいのは、その年限を2050年と明確に定めたことだ。ホンダは得意の2モーターHVである「e:HEV」を含め、全ての内燃機関から完全卒業し、EVとFCV以外を生産しない、世界で最も環境適応の進んだ会社へと意思を持って進もうとしている。

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矛盾だらけの説明

 さて、全体を読んでどう思われただろうか? 前半のプレゼンテーションでは、内燃機関とHVの打ち切りを明確に主張し、さらにEVとFCVに全ての経営資源を集中するという説明だったはずが、後半の質疑応答では、それらの具体的方法はひとつも明確にできず、むしろ課題をひたすら羅列することになっている。

 さらにいえば、技術をひとつに絞ることはしないという発言は、明確に全ての内燃機関との決別を宣言したプレゼンテーションと激しく対立しており、どう考えても、実態としてホンダはマルチソリューションでやっていくことを示しているとしか思えない。プレゼンが正しいなら、e-fuelの研究は即刻止めるべきだし、国内のHVも打ち切るべきだ。

 しかし、前半と後半でどちらに説得力があるかといえば、これは明らかに後半だ。前半は単なる決意表明であり、具体案が何もない。むしろ後半こそ丁寧に自社が直面している問題を露わにしていると感じる。

 厳しい言葉で言えば、ホンダはこの会見で「絵空事のプレゼン」を行ったことになる。広報広聴とは企業の活動を、社会に対して真摯に丁寧に説明することであって、ウケの良い、あるいは耳ざわりの良いことを社会に迎合して発表することではない。その一事を持って、筆者はホンダの会見を否定する。実は当初、この記事のタイトルは「ホンダが死んだ日」にしようと思ったくらいだ。

 それは自工会会長が一人で矢面に立ち、膨大な侮辱的批判を受けながらも実態を主張し続けた姿勢と対極にあるもので、むしろ社会から批判されないことのみに注力して、真摯に難しい説明を行う人たちへ逆風を後押ししたという意味では大きな罪だと筆者は思う。こういうところでラクをしてはいけない。

 救いとなるのは、エンジニア出身の三部社長が、質疑応答の個別の質問に対しては正直であったところにあると思うが、それだったらどうしてあのプレゼンなのだという疑念が拭えない。ああいうコミュニケーションを行えば、新聞やテレビの見出しがどうなるかは、誰が考えても明白で、「EV化さらに加速。ホンダが内燃機関から撤退」となるのは火を見るより明らかだ。

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