日本のアニメは海外で大人気なのに、なぜ邦画やドラマはパッとしないのか:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が米国でもヒットしている。このほかにも日本のアニメ・マンガは海外市場で勝負できているのに、なぜ邦画やドラマはパッとしないのか。その背景に、構造的な問題があって……。
作品をダメにしている「既得権益」
なぜ日本の邦画やドラマが世界でヒットしないのかという議論があると、「黒澤明など昔の映画人はもっとすごかった」「役者の演技力がない」など個人の能力不足に話を持っていく人がいるが、実は個人の頑張り以前に、「つまらない作品」しか世に送り出せない構造的な問題がある。そのボトルネックとなっているのが「既得権益」にあぐらをかく民放キー局なのだ。
今、世界的にヒットを飛ばす韓国ドラマをけん引するのは「スタジオドラゴン」という制作プロダクションだ。ここが自分たちで放映権を持っているので、ケーブルテレビやネットフリックスなど動画配信サービスとも組んで次々と魅力的な作品をつくることができるのだ。
「つまらない」「演技が下手」「ストーリーが陳腐」など作品に文句を言うのもいいが、どんな体制でつくられているのかにも目を向けていただきたい。
大多数の作品は、民放キー局など毎度お馴染みのメンツが、同じような体制で作品を生み出していることに気付くのではないか。ネットフリックスやWOWOWなど広告収入に依存しないプラットフォームのもとで、これまでにないような意欲的な作品がつくられてきてはいるが、まだまだ少数派だ。
このような「ムラ社会的なものづくり」の構造にメスを入れない限り、いつまでたっても日本の邦画やドラマは「ガラパゴス」のままなのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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