なぜ? トラブル続出のみずほ 「ワンみずほ」どころじゃない三竦みの権力構造:このままでは「落ちこぼれメガバンク」に?(2/4 ページ)
同じメガバンクの三菱UFJや三井住友と比較すると、トラブルの絶えないみずほ。筆者はその背景を、リーダーシップのなさだと指摘する。元をたどれば、合併時の権力争いに理由がありそうだ。
みずほの「残念」な合併事情
みずほは2000年、旧日本興業銀行(興銀)、第一勧業銀行(DKB)、富士銀行(富士)の都市銀行3行が経営統合を発表し、みずほホールディングス(現みずほフィナンシャルグループの前身で、現在はグループの中間持株会社)を設立。02年に3行をみずほ銀行とみずほコーポレート銀行に再編して、メガバンクとしてのみずほがスタートしました。
都市銀行各行がバブル後の不良債権処置を推し進める中で最初ともいえる大きな再編であり、国内においては圧倒的なサイズとなるメガバンクの誕生に世間をあっといわせ、その後の三井住友、三菱東京UFJの統合の引き金役を演じたといえるでしょう。
関東圏を地盤とする3行統合の動きは、同じ長期金融を扱う日本長期信用銀行、日本債券信用銀行の破綻を目の当たりにした興銀の焦りから一気に加速したと、3行関係者は当時語っていました。興銀は戦前、富国強兵策を押し進める政府系政策金融機関としてスタートし、戦後民営化の後も戦後復興、高度成長を長期金融資金提供の側面から支えてきたという、他の民間金融機関とは一線を画する存在でもありました。
金融界での同行に対する評価は他行とは比較にならない「超エリート銀行」であり、東大卒行員の多さもあってか(筆者が就職した時代は、新卒採用の5割近くを東大卒が占めていました)、旧大蔵省が対銀行政策を練る際には常に興銀の意見を重用するなど、日銀と共に半官僚的な色合いも濃い特殊な存在でもありました。
また、大手企業や業界に関する調査・審査部門は他行の追随を許さぬレベルの高さを誇り、地方銀行を中心として多くの金融マンが同行に研修派遣され、そのノウハウを持ち帰る、というような流れも定常化していたのです。当然、興銀行員のプライドは極めて高く、預金集めに奔走していた一般銀行とは異なり金融債発行による資金調達を認められていた点も、彼らの特権階級的意識を高めていたといえます。
そんな特殊な存在の興銀が、リテール業務に専心する一般民間金融機関であるDKB、富士と経営統合したわけなのです。どう考えても、2行統合よりもはるかに組織融合に時間を要するであろう3行統合である上に、そのうち1行が人一倍プライドの高い“異業種”なのですから、この統合が困難を極めるであろうことは容易に想像ができました。
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