いずれはNTTが買収も? 楽天・郵政タッグに透けて見える、「楽天モバイル」の“賞味期限切れ”感:官製値下げで窮地に(1/4 ページ)
楽天と日本郵政が資本提携も、提携による具体的なメリットが見えづらく、実質的には窮地の楽天モバイルに対する国からの資本注入ではないかと筆者は指摘する。当初は業界の閉塞的な状況を打破することを期待され、鳴り物入りだった楽天モバイルは、今後どうなってしまうのか。
楽天と日本郵政(以下郵政)の提携が発表され、大きな注目を集めています。この大型提携の背景にはどのような事情が隠れているのか、今後のいかなる展望が予想されるのかという観点から、この話題を掘り下げてみます。
まず公表された今回の提携における趣旨ですが、両社は既に2020年12月に商品配送業務を軸とした業務提携を発表しており、今般の資本提携が加わることで関係をより強固なものにしていく、とのことです。しかし資本提携については、郵政が楽天の第三者割当増資を引き受ける形で1500億円を楽天に出資することで持株比率8.32%の筆頭株主(オーナー関係株主を除く)になるのに対し、楽天から郵政への出資はありません。当事者が「歴史的提携」という割には違和感満載な資本提携なのですが、その実態はどうなのでしょうか。
次に、楽天の三木谷浩史会長兼社長、郵政の増田寛也社長が出席した共同会見を受けて、報道された表向きの提携メリットをみてみます。楽天サイドとしては、本業のEC事業で郵政との提携強化による商品配送の迅速化および低コスト化が見込まれる点、モバイル事業においては郵政からの資本供与を課題となっている基地局充実に充てることができる点、さらには全国2万4000局にのぼる郵便局内でのモバイル契約窓口の設置を挙げています。
対して郵政サイドは、12月にも強調されていた年間3兆円規模とされる楽天のECサイト商品の配送を優先的に引き受けることに加え、全般的に後れを取っているデジタル技術に関して人材を受け入れるなどして強化が図れること、を挙げています。両社のメリットとも、何となく薄味な感じがするのは気のせいでしょうか。
そんな薄味な双方のメリット以上に気になるのが、今回の「資本提携」のタイミングです。というのは、本発表のちょうど1カ月前に楽天の2020年12月決算が公表され、その内容が1141億円の巨額赤字計上という大変ショッキングなものだったからです。前年同期も赤字でしたが、その額は318億円。赤字幅は3倍以上に広がった形です。
赤字の理由は明白でしょう。携帯電話事業は、免許業務として事業を管轄する総務省の目が光っており、楽天モバイルも一日も早く大手3キャリア並みの通信エリアの拡大と質の安定が求められています。大手3キャリアと比べて、通信エリアおよびその質で明らかな後れを取っていることからモバイル事業の4G基地局増設に向けた投資を急ぐ必要があり、その莫大な費用が赤字を生んでいるのです。また、基地局開設の遅れは、楽天モバイルのサービス開始が当初予定よりも半年遅れた最大の理由でもあります。総務省だけでなくサービスインを待ち望む顧客のためにも、投資を急がざるを得ない状況に置かれているのです
ちなみにこの決算では、同社の本業である国内EC事業はコロナ禍での巣ごもり需要の盛り上がりもあって、営業利益が前年比13%増の約580億円を計上しています。つまり、前述の通りいまだ設備整備がおぼつかないモバイル事業の大赤字が完全に全事業の足を引っ張っているわけです。しかも悪いことに、モバイル事業はとにかく誤算続きで泥沼化しているのです。
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