2015年7月27日以前の記事
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いずれはNTTが買収も? 楽天・郵政タッグに透けて見える、「楽天モバイル」の“賞味期限切れ”感官製値下げで窮地に(2/4 ページ)

楽天と日本郵政が資本提携も、提携による具体的なメリットが見えづらく、実質的には窮地の楽天モバイルに対する国からの資本注入ではないかと筆者は指摘する。当初は業界の閉塞的な状況を打破することを期待され、鳴り物入りだった楽天モバイルは、今後どうなってしまうのか。

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 まずは、ブランドイメージの毀損です。先にも述べた基地局準備に対する見通しの甘さから、当局からも事業開始にストップがかかりサービスインが遅れ、出ばなをくじかれてしまいました。加えて、昨秋の菅政権誕生により一気呵成した携帯電話料金の官製値下げ圧力です。NTTがドコモを完全子会社化する形で本気の値下げに取り組んだことで、業界の「横並びブレイカー」として投入されたはずの楽天までもが値下げ競争に巻き込まれてしまいました。こうした大誤算が重なって、今後の事業展開に暗い影を投げかけています。


ドコモの猛烈なカウンターパンチとして「ahamo」が登場(出所:同社公式Webサイト)

 業界参入当初、価格破壊的に掲げた「月2980円」の楽天価格でしたが、官製値下げでドコモがこれに追い付きました。後発かつ通信環境で劣る楽天はさらなる値下げせざるを得ず、月1980円という限界価格を提示するに至りました。この値下げは、1契約当たりの収益低下だけでなく、当初契約数700万件としていた損益分岐点契約数に大幅な上乗せを余儀なくさせる由々しきものです。現時点での契約数はようやく250万件を超えたばかり。事業の黒字化は果てしなく遠くなったといわざるを得ないでしょう。

 今後の基地局への投資負担も重くのしかかります。現状の4G対応だけで、従来計画の6000億円からさらに3〜4割の上乗せを公表しており、利益が減る中でも出費はかさむのです。しかも、この先に控えているのは5G、加えて6G対応に向けた投資です。ただでさえ世界に後れを取っている5G対応で早期に追い付き、かつ6Gでは覇権を取り戻すというのが政府方針でもあり、通信事業という公共性を担う免許事業に乗り出した以上、楽天がこれに従うのは当然の責務です。要するに、今後も兆単位の投資が必要になる事業であり、NTTがドコモ単体では手に負えないとして完全子会社化によりグループの総力をあげての取組姿勢に切り替えたことが、何よりその事業の先行きの厳しさを物語っています。


4G投資をしている時点で、楽天は周回遅れか(出所:ゲッティイメージズ)

 このような状況を踏まえて郵政からの1500億円出資を考えてみましょう。すると、一般的には莫大な金額である1500億円も、今の楽天にとっては4G基地局の増設投資分にも満たない微々たる存在であることが分かると思います。今回、郵政の他にも中国のネット大手テンセントや米国の大手流通ウォルマートなどからも出資を受け、郵政の出資と併せた資金調達総額は2400億円となります。これでようやく4G基地局増設投資分に符合する程度であり、今回の資金調達は新たな前向き投資資金の確保とはおよそいい難いのです。

 では、なぜ今回主な資金の出し手が郵政なのでしょうか。中国資本のテンセントから657億円の出資を受けるというのも非常に気になる点ではありますが、本稿では郵政との提携に焦点を絞って見ていきます。

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