EV販売世界トップ「宏光MINI EV」に政策変更の暗雲 〜上海市が優遇政策から除外:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(4/4 ページ)
中国EV市場を盛り上げた立役者である米テスラを上回る勢いで、上汽通用五菱汽車の「宏光MINI EV」が売れている。カスタマイズバージョンの発表などさらなる快進撃を目指していたが、今月に入って上海市のEV普及政策の対象から除外され、販売が一時停止されるなど混乱が生じている。
政策不透明で、販売一時停止
とはいえ、MINI EVを含めた超小型EVの今後のマーケティングは何らかの見直しを求められる可能性がある。
価格破壊で注目されたMINI EVは発売から10カ月が経ち、国内外で知名度が上昇してブランド力もついてきたところだ。今年4月には航続距離を改善し、外観を若者の好みにさらに寄せた特別仕様車「マカロン(Macaron)」、そしてオープンカーバージョンの「MINI EV Cabrio」を立て続けにを発表した。
都市部では「2台目」「配偶者や彼女へのプレゼント」といった新たな需要の鉱脈が生まれつつあったが、いつナンバープレートが取れるか分からないなら、消費者も様子見するしかない。
現地の複数のメディアによると、政策変更の情報が広がり、五菱汽車の販売店はMINI EVの販売を一時見合わせているという。人気車種のMINI EVは契約から納車まで長い時間を要し、例えば納車待ちの車両が優遇政策を受けられるのかなど詳細が分からないからだ。
「全体への影響は軽微」といわれても、購入を考えている都市部の消費者、そしてMINI EVのヒットによって株価も上昇した五菱汽車にとっては、やきもきする日が続きそうだ。
筆者:浦上 早苗
早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37。
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